日本の可能性「アンモニア」と「ハイブリッド車」

アンモニア混焼とは、アンモニアを石炭に混ぜ燃やすことであり、温暖化ガスの排出を抑えることが可能になる。資源エネルギー庁の試算では、国内の大手電力会社が現在保有するすべての石炭火力発電所でアンモニア20%混焼を行えば、CO2排出削減量は約4000万トンになる。

実際、声明に「アンモニア利用の可能性」についても明記し、天然ガスなどの化石燃料について“段階的に廃止”とした点は、覚えておいても損ではないだろう。

もう一つ大きいのは、自動車分野。EV(電気自動車)の導入目標を定めるのではなく、ハイブリッド車も含めた幅広い範囲の車で脱炭素を目指すとした点。脱炭素の進捗しんちょくを毎年確認しながらEV導入を進めていくと日本のお家芸、ハイブリッド車に未来を残した。

テールライトの下に「ハイブリッド」の文字
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G7環境大臣会合の報道だけを見ると、日本が欧州の注文に防戦したとか、言い分を通したという記事も目立った。しかし、それは本当なのか。

ドイツでは再エネ活用が停滞、脱原発にブレーキ

経済界の重鎮らと話していて「日本の脱炭素は、行き過ぎでは」とか「環境保全という音頭で、欧州や米国のための利益に振り回されすぎ」という本音も聞こえる。

実際に欧州であれだけ地球温暖化への防波堤として脱炭素が叫ばれたのに、ロシアのウクライナ侵攻で天然ガスが高騰・品薄になると、ドイツは逆の方向に向かいつつある。

ドイツは電力のほぼ半分を再生可能エネルギーで賄っている。しかし、ロシアからの天然ガスが止まったため、液化天然ガスをこれまでよりも多く輸入。加えて石炭火力発電もこれまでより多く動かすことになってしまったのだ。結果、再生可能エネルギーの割合は停滞し、温暖化ガスの排出量は逆に増えた。

この自己矛盾に、脱原発に舵を切ったはずのドイツでは、原発の必要性が再び議論され始めている。4月15日にはドイツで最後の3原発(イザール2、エムスラント、ネッカーヴェストハイム2)が運転を停止した。反原発派が勝利を祝う中、閉鎖反対の人々もデモ行進したのだが、反原発派の中にも、一時的に原発再稼働支持にまわる人が目立ったという。