「いつも」は精神面にも影響を与える

私たちは1つの事象だけを捉えて、そうしょっちゅうあることでもないのに、つい「いつも~してばかり」という表現を使いがちです。何度か勉強しているのを見かけて、「いつも勉強ばかりしているね」と言ってみたり、たまたまパチンコ屋から出てきたところに出くわして、「暇に飽かして、いつもパチンコばかりしているんだね」と決めつけたり。これは、日常における非論理的な表現の典型と言えます。

ちょっと話は横道にそれますが、この「いつも」は心理面にも影響を与えます。

一例をあげれば、自分はアルコール依存症だと思い込んでいる人の場合。現実に1日のうちで酒を飲んでいる時間を調べてみると、「いつも」というわけではなく、飲んでいない時間、飲んでいない日もある。そこを認識すると、「いつも」の縛りから解き放たれて、治療がうまくいく場合があるそうです。

「いつも~してばかり」がめ言葉ならいいのですが、そうではない場合、言われたほうは「ああ、自分はダメな人間だ」と精神的に追い詰められてしまうのです。

論理的に話すためには「数字で示す」のが一番

それはさておき、ほかにも前の例のように、「該当する人が数人いるだけで『みんな』と言う」とか、「リスクがどの程度かを調べもせずに『けっこうある』と言う」など、この種の“あいまい表現”は始終やりとりされています。

齋藤孝『格上の日本語力 言いたいことが一度で伝わる論理力』(中公新書ラクレ)

論理的に話すためには、「実証的なデータに基づいて数字で示す」のが一番です。そこをまず大事にしてください。

それができない場合は、グレードをしっかりわきまえて、相手と共有できる表現にすることです。

たとえば、リスクについて言うなら、「こういう場合に元本割れするリスクがあります。これまでの統計データによると、5%程度のリスクですね」という言い方は、聞き手にとって親切です。

図表1で、グレード別に妥当な日本語表現を紹介しますので参考にしてください。

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