「必要なら赤字でも支出」が当たり前

【会田】社会保障などの「義務的歳出」については、他国でも、このペイ・アズ・ユー・ゴーの原則を持っています。社会保障の支出が増えるなら、増税して歳入を増やしましょうということになります。

しかし、国家予算の中でも、未来への投資としてフレキシブルに変える費用、具体的には教育や防衛、公共投資などの「裁量的歳出」にも、日本はこの「ペイ・アズ・ユー・ゴーの原則」を適用していますが、これをやっているのは日本だけです。

他国では、裁量的歳出が必要なら、歳出をします。その時点で十分な税収があれば税収をあてるかもしれませんし、税収が足りなければ国債を発行するのが普通です。

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「必要なら赤字でも支出」が当たり前(※写真はイメージです)

菅・野田政権時に作られた謎のルール

【会田】日本でもかつては「裁量的歳出」に「ペイ・アズ・ユー・ゴーの原則」を適用していませんでした。これを適用することになったのは、民主党の菅・野田政権からです。いわゆる「骨太の方針」で、追加歳出には追加歳入が必要だと、つまり全ての歳出に対して「ペイ・アズ・ユー・ゴーの原則」を適用するとしてからです。

その後、自民党政権に代わってからも、なぜかこの原則がそのまま適用されてきました。

【森永】防衛費の増額に関して最近出てきた「財源確保法」的な発想って、そこからずっと続いているということですね。

【会田】防衛費の増額は「恒常的な歳出」だから、「恒常的な歳入」が必要ですとなったわけですね。ただ、これはグローバルなやり方ではありません。

防衛費の増額は「裁量的歳出」なので、その財源を増税によってまかなうということは、グローバルのルールでは考えられません。