日本の財政は本当に悪化しているのだろうか。クレディ・アグリコル証券チーフエコノミストの会田卓司さんは「国債償還費を歳出に計上し、税外収入を歳入に計上しないなど、日本の財政運営はグローバル基準から外れている。グローバル基準で考えると、日本の財政は悪化していない」という。経済アナリストの森永康平さんとの対談をお届けする――。

※本稿は、YouTubeチャンネル「森永康平のビズアップチャンネル」の一部を再編集したものです。

日本国旗と1万円札
写真=iStock.com/Ca-ssis
※写真はイメージです

「日本の財政は年々悪化している」は事実と異なる

【森永康平(以下、森永)】積極財政をやると国が破綻してしまう、と信じている方はまだまだ多いようです。その根拠としてよく使われるのが「ワニの口」です。

図表1のように、日本の財政は、まさに「ワニの口」が開くように、年々「歳入」と「歳出」の差が開いている、というわけです。

【図表1】典型的な開いたワニの口

ただ、これは事実とは異なるということですね。

「国の借金」を返済しているのは日本だけ

【会田卓司(以下、会田)】はい。日本の財政運営がガラパゴスな謎のルールに基づいているため、そのように見えるだけだと思います。

日本の財政には4つの謎ルールがあります。

1つ目は「国債の60年償還ルール」。60年間で国債を現金償還する、つまり完全に返済するというルールです。ただ、こうしたルールを持っているのは実は日本だけです。

国債は一度発行すると民間の資産となるものです。だから、他の国では、国債の償還期限が来ると、新たに国債を発行して、借り換えをしています。

このほうが世界では普通で、「60年償還ルール」のようなルールは存在しません。