「昭和の考え方」がまかり通っている

【森永】日本ではよく「欧米がやってるから正しい」という、ある意味謎の理論を振りかざす人が多いですが、一方で、財政だけはガラパゴス化していて、「欧米がこうだからこうしよう」という話にならない。その点がすごく不思議です。

【会田】私も不思議です。財政については昭和の考え方がまかり通っていますね。

もう少しグローバルに、フレキシブルな考え方をすれば、日本経済はもっと成長するはずです。それなのに、財政が日本経済に手枷足枷てかせあしかせをはめて縛っているのが現状といえます。非常にもったいないと思います。

歳入も低く見積もられすぎている

【森永】先ほど債務償還費を無理やり乗っけてるので、ワニの上顎が開くという話がありましたが、実はこの下顎の方にもトラップが仕掛けられていると、経団連の報告書でも書かれていましたね。

【会田】はい。一般会計の「歳入」、つまり「税収」がワニの口の下顎にあたります。

ただ、国の歳入は税収だけではありません。他にも為替相場に介入した際のキャピタルゲインなど、税外収入があります。ただそれは「外為特会」をはじめ、一般会計とは違う「特別会計」に計上されています。

つまり、一般会計の「歳入」は、実態より低く見積もられているのです。

【森永】グローバルの基準では、「歳入」に税外収入も入ってくるということですね。

日本の財政は悪くなっていない

【会田】はい。その通りです。

一般会計の「歳入」に税外収入を足し、「歳出」から償還費を引くと、図表2になります。

【図表2】グローバルスタンダードでの開いていないワニの口

言われているほど日本の財政が悪くないことがわかると思います。

興味深いのはバブルの時の財政状況です。

このグラフでは、黒い線がしっかり上に出ています。つまり、バブルの時には歳入が歳出を上回っていたということです。

バブル以降に財政が悪化したのは、景気が悪くなり企業がお金を使わなくなったことが原因だということです。

「増税が必要」はダブルスタンダード

【森永】バブル崩壊時の処理をミスったせいで、企業が基本的に自前のお金だけでやろうとレバレッジ経営をやめようという風になってしまったのが、デフレが30年続いている元凶だと僕は思っているんですが、その証拠がまさに現れていると思います。

【会田】「60年償還ルール」を撤廃すれば、「ワニの口」は閉じるわけです。

緊縮側の意見というのは、この「ワニの口」を前提にしていたわけですから、その根拠が失われます。

いま「60年償還ルール」を撤廃すれば、16兆から17兆ぐらい歳出が減ります。

防衛費増額に加えて子ども予算を倍増しても10兆円ぐらいにしかならないので、いまの国家予算の規模でも増税なしで十分実現可能ということになります。

逆に、これを否定するなら、「ワニの口」理論がインチキだったことを認めることになります。

ある時は「ワニの口」を使って「財政は大変だ」と言っていたのに、じゃあ「ワニの口」が閉じる方向で財源を見つけようとすると、それは財源として使えません、増税しかありませんという。ただそれは、明らかなダブルスタンダードではないかと思います。

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