「家計簿の考え方」で予算が作られている

【会田】一方で、財政というのは景気、つまりマクロ経済に大きな影響を与えます。

景気がいい場合は、財政収支もある程度黒字になるほうが望ましいし、逆に景気が悪い場合は、財政収支の赤字を拡大してでも景気対策をするべきです。

マクロ経済の状況に応じて、望ましい財政赤字はどのぐらいなのか。日本の財政運営はそれを考慮するのがとても苦手です。

【森永】いわゆるラーナーの「機能的財政論」のように、雇用とか物価とかマクロ経済の観点をもとに財政を運営するというのが、グローバルで見たら普通だと。

しかし日本では、これが未だに無視されていて、まるで家計簿のように、単年度で借金を返さないと破綻してしまうみたいな考え方で予算が作られていると。

【会田】そういうことですね。

家計簿
写真=iStock.com/mapo
「家計簿の考え方」で予算が作られている(※写真はイメージです)

「国債は資産」という発想がない

【会田】先ほどの「60年償還ルール」で財政運営していけば、60年後に国債発行額はゼロになります。

ただ、他国ではそうしたルールはなく、永続的に借り換えていきます。その視点で見れば、「国の借金は将来世代の負担で返さなければいけない」という切迫感はなくなるんだと思います。

そもそも国債は「資産」として、将来世代に受け継いでいくものです。また、国債を発行してインフラを整備すれば、そのインフラも受け継がれていきます。そうした発想がないことが問題だと思います。

財源を問題にするのは日本だけ

【会田】4つ目の謎ルールは「裁量的歳出にまでペイ・アズ・ユー・ゴーの原則を適用していること」です。

財政の議論において「恒常的な支出のためには、恒常的な歳入が必要です」とよく言われます。

これは一見、当たり前のようにも聞こえますが、こういう原則で財政運営をしているのは、実は日本だけです。