モテなくていいと考える人からボケる

前頭葉を刺激する意欲はなんでも構わないと思うのです。「異性にモテたい!」というのも立派な意欲です。モテるために服を新調したり、話術を磨いたり、綿密にデートプランを考えたり、そのたびごとに前頭葉はフルに活動するでしょう。

「今さらモテるとかモテないとかどうでもいい」と言う人もいるでしょうが、だったら別に熱意を傾けられる対象を探せばいいだけです。

わたしが思うのは、人間の欲求の中で食べることであったり求愛することだったり集団に属することは根源的なもので、「年甲斐もなく」などとして一概に否定すべきではないと思うのです。

そういうことが刺激になる、そういう意欲が持てる人はそうすればいい、というだけの話です。もちろん不倫を推奨したり、キャバクラ嬢やホストに入れあげて散財することを勧めているわけではありません。

ただ、「モテたい」「好かれたい」という本能的な欲望を否定して、「大人げない」「くだらない」と意欲に蓋をすることの方が、むしろ前頭葉の老化を早めてしまうのではないかと思うのです。

だったらいっそ、「これも前頭葉のためだ」くらいに割り切って、高齢者になってもボーイフレンドやガールフレンドとデートをして、周囲から「年甲斐もなく」と顰蹙を買うくらいでちょうどいいのではないかと思うのです。

理想は養老孟司先生になること

わたしのラーメン屋巡りだって相当に「年甲斐もない」行動だろうと思います。わたしは現在、62歳です。医師ですから、ラーメンで摂取するカロリーやコレステロールだってバカにならないと知っています。

それでも、新しい店を探し、選び、知らない道を歩く刺激や、それに伴う運動量が得られることと動脈硬化を天秤に掛けると、ラーメン屋巡りをやめようとは思わないのです。

初めての土地に旅行に行くのもよいでしょう。新しいスポーツを始めるのでもいいでしょう。現役の時だったら並ばなかったような店にリタイア後だから並んでみるのでも、これまで読まなかったプルーストに挑戦するのでも、中国語を始めるのでもなんでもいいと思います。

なるべく初体験をし、トライアンドエラーをしてみるというのが前頭葉のためにはよいというのがわたしの考えです。わたしは人生の先達として、解剖学者の養老孟司先生を理想だなと思っています。