人生がつまらないのは前頭葉を使っていないから

お目にかかるたびに思うのですが、85歳の今も知的好奇心に溢れ、発信力を保ち、昆虫のためなら海外にも足を向ける。そう、「年甲斐もなく」ゾウムシ研究に熱中しておられるのです。

おそらく、日々がご自身のやりたいことで満たされていて、暇だと思う時間などないのではないかと思います。どこに行って何を調べて、何時にどこに行けばどんな昆虫がいて、などとシミュレーションするだけでも忙しくされているのではないか。そしてそれは、きっと楽しいことで、わくわくすることではないかと想像するのです。

これからの時代の年のとり方を考えたとき、前頭葉を使った方がボケずにすむとかそういうことを超越して、おそらく前頭葉を使った方が人は楽しいのだ、と養老先生を見ていると思わされるのです。

人生がつまらないのは前頭葉を使っていないから。人生が楽しいのは前頭葉を使っているから。極めてシンプルですが、これが真実なのではないかなと思うのです。

間の脳のチョークローブで指す人間の手
写真=iStock.com/eli_asenova
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他人とのコミュニケーションがボケを防ぐ

人とつながる前項で、他者とのコミュニケーションは脳の血流を増やすことを説明しました。他者との関係性の構築は、EQの5大要素を思い出してもらえればおわかりいただけると思いますが、前頭葉がもっとも活動する場面です。

また、第2章では「孤独」のリスクも述べたかと思います。積極的に他者と上手に関わることが前頭葉を衰えさせないためにも重要だとわたしは考えます。

2020年に医学誌『ランセット』が発表した「12の認知症発症リスク」によると、3番目に「老年期の社会的な交流の不足」が挙げられています。

これは、「認知症の発症を40%予防できるか、遅らせることを期待できるリスク」のリストで(残り60%は不明)、つまり、「老年期の社会的な交流の不足」などさまざまな発症リスクを解消できれば、40%は予防できるか、遅らせることが「期待できる」というわけです。