認知症を防ぐ「8つの社会関係」

2017年に発表された国立長寿医療研究センターの研究では、要介護者ではない65歳以上の約1万4000人を9年以上にわたって追跡調査し、8つの社会関係について認知症発症リスクがどのくらいあるか報告しています。

8つの社会関係とはざっと説明すると「就労しているか」「地域のグループに参加しているか」「配偶者はいるか」「同居家族の支援があるか」「友人や隣人との交流はあるか」「友人や知人の支援があるか」「別居している子どもや親戚の支援があるか」「別居している子どもや親戚との交流はあるか」というもので、前半5つの項目に該当する人は認知症になるリスクが低いという結果でした。

また、該当する項目が0か1の人に比べると、5項目を満たす人は認知症リスクが46%低いという結果でした。

これは認知症に関するデータではありますが、認知機能の低下とは、初期の頃は前頭葉機能の低下にほかなりません。

アウトプットと健康の意外な関係性

久しぶりに会った人の名前が思い出せない、といったよく経験するような記憶障害の多くは「想起障害」です。なぜ想起障害が起きるかというと、人間の脳は上書きされればされるほど昔の記憶が引き出しにくくなるからですが、「インプット」ばかりするのではなく、「アウトプット」する経路を作ってやれば想起はしやすくなります。

逆に、アウトプットの機会が少ないと、記憶を「想起」しにくくなります。

例えば、退職して会社に通わなくなった場合を考えてみてもらえればわかりやすいかもしれません。

会社の同僚や上司だった人に対して会話する機会も減る、つまりアウトプットの機会が減れば、同僚や上司だった人の名前も出て来にくくなるわけです。

和田秀樹『不老脳』(新潮新書)
和田秀樹『不老脳』(新潮新書)

小学校の同級生や中学時代の恩師の名前なども同じことです。逆に言えば、アウトプットの機会を増やせば記憶の回路は活性化されます。そのためにもアウトプットする相手が必要ですし、その関係性を保つこと、人とのつながりが大事になってくるのです。

内閣府の2018年版高齢社会白書によると、55歳以上を対象とした調査で家族や友人との会話の頻度が「ほとんど毎日」の人の主観的な健康状態は、「良い」が90.1%だったのに対して「ほとんどしない」人では1.1%と大きな開きが出ています。

「主観的な健康状態」ですから、必ずしも実際の健康状態とは一致しないでしょうが、会話がないと「どうも調子が悪いな……」という意識に陥りがちであることは心に留めておいていいのではないかと思います。

ぎくりとしたあなた。夫婦関係や家族関係、友人関係を改善することは、いつ始めても遅くないとわたしは思います。

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