また、畑村代表は「過去に起こった自分たちの失敗の原因を、事の出発点へ遡って探っていく『逆演算』を行っておくことも大切です」という。その際に重要なのは、原因を「要因」と「カラクリ」に分けて考えること。先ごろも大手コンビニのチケット販売の子会社で、幹部による売り上げ代金の不正流用が発覚した。コンサートの企画会社へ支払うまでに、タイムラグがあって、手元に滞留していたことが要因になっていた。
しかし、正常な人間であれば、会社の金に手を出さない。問題の幹部は不正流用した金を豚肉輸入会社の投資にあてていたそうだが、そうまでして儲けたい理由が何かあったはずだ。そこでトラブルの出発点へ遡っていくと、「ギャンブルで借金ができた」「女性問題で金が必要だった」などの理由が浮かんでくる。それらが畑村代表のいうカラクリで、その道筋をいくつかパターン化しておけば、次に同様のトラブルが起きそうなときに“芽”の段階で摘める。
そして、この仮想演習と逆演算の思考を行っておくと、いざというときに頭が混乱することなく、スムーズに事態に対応できるのだという。
「不祥事が発覚した際に外部が知りたがるのは、いつ、どこで、どんなことが、どういう経過で起きたか。その結果、会社にどのような影響が出てくるのか、社会に与える影響としてどのようなことが考えられるのか。それらの影響は長期化しそうなのかどうか。また、金銭面や人的、組織的な損失はどうなのかということなどです。それらをまとめたものが『ポジションペーパー』で、日ごろから演習を行っていれば、その時点でいえること、いえないことを含めて頭のなかを整理しながら作成することができます」
いまや社会からの信頼なくして企業の存続はありえない。経営トップだけでなく、中間管理職、そして現場の社員を含めた全社員が、この仮想演習と逆演算によって自分の仕事を見つめ直し、頭のなかを整理しておくことが強く求められているのかもしれない。
1.冷静さを取り戻す「間」も必要と心得よ
2.3つの現場主義で仮想演習を実践
3.過去の失敗を活かす逆演算を怠るな
※すべて雑誌掲載当時