「非武装地帯を設けることが現実的」という見解も
だが、ウクライナ側も弱みはある。現在頼りにしている西側の支援も、決して無尽蔵ではない。ニューヨーク・タイムズ紙はまた、春の攻勢で成果を上げられなければ、欧米諸国から和平交渉への圧力が高まるシナリオもあり得ると論じる。
これとは別に、米外交官のリチャード・ハース氏および米国際政治学者のチャールズ・カプチャン氏は、米政治外交専門誌のフォーリン・アフェアーズに寄稿し、今後あるべき展望を論じている。
両氏は、アメリカと同盟諸国は、外交的上の最終局面をプランニングする必要があると説く。ウクライナは自軍の攻勢が高まった時点で停戦を提案し、両軍は前線から兵器を引き上げ、事実上の非武装地帯を設けることが現実的な路線だという。
こうすることで両氏は、ウクライナとロシアが仲介国の介入を得て交渉のテーブルに着き、和平交渉を開始する下地ができるはずだと見る。両氏はこのプロセスへ至る前段階として、ウクライナにとって、この夏の攻勢が正念場になると指摘している。
戦争を終わらせることができるのか
両氏は、「この夏、ウクライナが戦場で成果を上げたならば、少なくともプーチンが停戦と和平案を、メンツを保つための切り札になると考えることが、もっともらしさを帯びる」と分析している。
侵略戦争が幅を利かせることはあってはならないが、現実的な問題として、完全勝利への道はロシアとウクライナのどちらにとっても遠い。ロシアは現状以上の侵攻を停止し、ウクライナ側も一定の痛みを受け入れることを検討すべきとの意見が出ているようだ。
プーチン氏もゼレンスキー大統領も決して譲歩の言葉は口にしないが、日々失われている両国の人命を守るためにも、両者落としどころの探り合いに転じるべき時が来ているのかもしれない。