同局は、アブシャエフ氏の主張の真偽を独自に検証できなかったとしている。しかし氏は詐欺罪で指名手配を受けており、また、ロシアでは囚人だけでなく拘留中の被告人も兵士募集の対象となっているとの情報があることなどから、市長が戦地に赴いたとの情報はあながち否定できないと同局は見る。
ウクライナの捕虜となった2人のワグネルの傭兵は、CNNに対し、ワグネルに雇われるためのハードルは非常に低いと証言している。殺人やレイプで有罪判決が下った囚人を含め、ほぼすべての囚人が応募できるという。
ワグネルを苦しめるコスト負担と採用活動の行き詰まり
囚人の採用で部隊を急編成したワグネルだが、2月ごろを境に、訓練不足の兵を前線に送り出す計画に無理が生じているようだ。CNNは2月、重傷を負った兵士たちが刑務所に戻って来ているため、戦場での惨状がほかの囚人たちに知れ渡るようになったとの見方を示した。採用が難航している一因だと記事は指摘している。
財政上の負担も重くのしかかる。同記事は、ワグネルの親会社であるコンコード・マネジメントの財務状況が非常に不透明であると指摘し、数万単位の囚人を新兵として抱え続けるだけの財務力に疑問を呈している。
さらに記事は「この囚人キャンペーンが、ワグネルの財務状況を疲弊させた可能性もある」と指摘する。募集に応じた囚人たちにワグネルは、「賃金やその他の福利厚生について大胆な約束」をし、犯罪歴の抹消も確約したという。
ワグネルに生じる財務的な負担は、直接賃金として支払う金額にとどまらない。新たに雇用した兵員に武器など装備を買い与え、ルハンスクに設営するキャンプで訓練を施し、前線まで輸送し、食事と消耗品を与えなければ集団は維持できない。
もう正規軍に頼るしかない
こうして苦労して戦闘地帯に送り込んだ兵士たちにも、そもそも使い物にならない者が少なくないようだ。囚人のひとりは、ラトビアからロシア語でニュースを発信するメデューサに対し、ワグネルの採用担当者が採用活動時、「(戦地に)到着するや否や、健康状態について言い訳を並べ、活動を拒否する者がある」と憤っていたと明かした。
ワグネルによる人員確保が期待できなくなっている一方で、正規軍は採用を強化しているようだ。英BBCは4月、「軍への入隊を市民に促す大々的な広告キャンペーンがロシアで開始された模様」だと報じた。モスクワの国防省は民間人に対し、軍との契約を優先し、一般の仕事をあきらめるよう呼びかけているという。
国営TVを通じ、このような広告が頻繁に流れている模様だ。BBCは、ロシア在住の人物によるツイートを取り上げ、「(広告キャンペーンは)いまやモスクワを完全に占拠しており、2分も行けばほぼ次のポスターが現れる」と報じている。