マーケティングのためのIT投資の必要性
一般的にビジネスにおいて重要なリソースは「人、物、金、情報」といわれるが、これまで企業が捉えてきた情報は人の情報や物の情報、金の情報であり、特に物と金に関する生産管理、在庫管理、販売管理、財務管理の情報を扱うための情報システムには膨大な投資を行ってきた。それは前述したように特に日本が強い製造業においては生産こそが一番重要な価値を生んでいたからともいえるし、何よりもIT投資は業務効率を向上させ人件費を削減することでコスト削減に貢献をする位置づけが長く続いていたからでもある。だがTOYOTAの新システムは生産管理にまでディーラーの見込み顧客の情報がインプットされている。デルはソーシャルメディア上のあらゆるデルに関する情報をモニタリングするシステムを構築した。顧客の情報がリアルタイムで企業内システムに流入し、顧客と共感を創り、競争力を作るためのIT投資を考える段階にきている。残念ながら日本の情報システム部の多くはマーケティング関連のIT投資を重要視してこなかった。ビッグデータと騒がれる以前にもDWH(データウェアハウス)という言葉で大量のデータを蓄積することが大事だということで、巨大なサーバーとストレージを買わされて、多くの企業がデータを腐らせた投資を無駄にしてきている暗黒歴史もある。
これまでの部分最適でコスト削減効果が重要なKPIであった情報システムは、このコミュニケーションバリューチェーンの考え方でようやく企業のビジネス生態系全体(顧客、販売店、企画、生産、調達、部品メーカー等)を最適化することこそが競争力そのものとなる状況を迎えつつあると言える。多くのWeb関連コストはマーケティングということで販促費からまかなわれているケースも多い。しかし、さすがに顧客とコミュニケーションするプラットフォームシステムを販促費で開発するのは無理な段階にきている。