有酸素運動は時間の無駄だ

エアロビックダンスやステップマシンなどの定常状態トレーニング(通常は目標心拍数を30~60分間維持する)をやることが、カロリーを消費し、心血管系を丈夫にするうえで最良の方法になる――それこそ、神話だ。

筋肉を増やしたい人だけでなく、脂肪を減らしたい人も、その両方を望んでいる人も、筋力トレーニングをやることこそが最良の方法になる。有酸素運動は、非効率的であり効果があまりないからだ。

消費カロリー数を示すトレッドミル(ルームランナー)に乗ったことがあるだろうか?

たとえば、45分をかけて300キロカロリー(以下カロリー)に達したとする。しかし、これは、消費する“総”カロリーが300カロリーになるという意味であり、基礎代謝量(体を動かさないでいても消費されるカロリー数)を300カロリー上回るということではない。

平均的な男性は、安静にしている45分間に105カロリーを消費するので、エクササイズによって実際に消費されるカロリーはわずか195カロリーしかないということになる。

195カロリーは、45分間のトレーニング後に30秒間で食べるベーグルよりもはるかに少ないカロリー量だ。有酸素運動がもたらす食欲が、実際に消費したカロリーを超えたカロリー摂取につながることもわかっている。

世界中のジムで、今日も、たくさんの人が「有酸素運動」をやって汗を流しているだろう。しかし、外見的に思い通りになっていかない理由はここにある。

もし、私たちの代謝機能がマシンメーカーが宣伝しているような「体重60キログラムの女性が目標とする有酸素運動の心拍域で15時間運動すれば約500グラムの脂肪が燃焼する」といった速度でカロリーを消費するようなものであれば、人類は氷河期を生き延びてはいない。

ウーリーマンモスを探している間にカロリーが枯渇し、狩ることができずに餓死することになるからだ。

現代生活に置き換えると、スーパーへ買い物に行くために消費するカロリーだけで息絶え絶えになるはずだ。スーパーへ向かう途中の道にはたくさんの人が倒れているだろう。

有酸素運動には、さらに悪いニュースがある。ランニング、サイクリング、ステップクラスのいずれであっても、トレーニングすればするほど楽になるのは、心肺機能が向上するからではない。

作業効率がアップするからだ。ほとんどの場合、筋肉に持久力がつくから楽になるのではなく、その特定の動作に対して体がより効率的に動くようになるからだ。

筋肉が加齢による代謝への悪影響を阻止する

また、有酸素運動を習慣化すると、実際には筋肉が萎縮していく。長期にわたって低強度の有酸素運動を続けると、そのために使う小さくて弱い「遅筋」の筋繊維だけを何度も発火させることになる。

有酸素運動をやるときに、強くて大きな「速筋」の筋繊維はあまり必要とされない。逆に、酸素を運んだり供給したりする上での負担になり、必要以上の筋肉は邪魔なものになる。そのため、筋肉を燃やすことで繰り返し要求されるその低強度の動作に適応していく。

定常状態トレーニングに筋力トレーニングを組み合わせても、特に、脚における除脂肪体重を増やす可能性は低くなる。筋肉を増やしたいなら、有酸素運動は、5キロランやトライアスロンなどをやる人が、動作の習熟度を上げる場合に限ってやるものだと私は思う。

加齢にともなって、特に30代から多くの人の体重が増え始める理由は、10代後半から20代前半の頃に比べて筋肉量が減ることが原因になっている。年を取るにつれて活動量が減っていくと、体は自然に筋肉を失っていく。この筋量の減少にともなって代謝率も低下していく。

そして、若い頃と同じような食生活を続けていると、月ごと、年ごとにゆっくりと体重が増えていき、ある日、鏡を見て「何が起こったんだ?」と驚くことになる。

貯め込んだ体脂肪を解消するカギは、筋力トレーニングをやって筋肉をつけ、若々しい代謝を取り戻すことにある。

まったく体を動かさないとしても、1ポンド(約454グラム)の筋肉を維持するには1日およそ10カロリーが必要になる。男女とも同じだ。

そのため、5ポンドにあたる約2.3キログラムの筋肉を余分につけると、1カ月に最大1500カロリーが追加で必要になる――これは、年間で2.3キログラムの脂肪を燃焼させることに相当する。

つまり、年に平均1キログラムの体重増加という加齢による代謝への悪影響を寄せ付けないカロリーを筋肉が消費してくれることになる。

一方、有酸素運動を継続的に行うと、時間の経過とともに、大きな「速筋」を2.3キログラム燃やしてしまう可能性が高まる。それは、消費カロリーが1日につきおよそ50カロリー少なくなることを意味する。