日本との絆を象徴するミキモトパールの4連チョーカー
女王の国葬ではロイヤルがそれぞれ追悼の気持ちを表した。ひときわ目立ったのがキャサリン皇太子妃だった。喪服にスレンダーな身を包み、大きめの帽子をかぶっていたが、首元にはパールのネックレスが美しい光を放っていた。
この4連のパール・チョーカーこそ、英王室で「ジャパニーズ・パール・チョーカー」と呼ばれている日本製の真珠である。
話は、1975年に女王がフィリップ殿下と共に初来日されたときまでさかのぼる。女王は真珠が大好きで、伊勢神宮を参拝後は、世界で初めて真珠の養殖に成功した三重県鳥羽市のミキモト真珠島を訪問した。御木本幸吉氏の努力が実るまでの苦労話しに耳を傾け、工程を見学、海女の方々の実演も視察した。
ロイヤルレディーに代々受け継がれていく
この折に日本政府が贈った真珠の粒をロンドンに持ち帰り、王室御用達の老舗宝石商ガラードに制作を依頼した。やがて中央にダイヤモンドを配した見事なチョーカーが姿を見せた。女王は数多くの貴重な宝石を所有しているが、特にこのパールを気にいり、1980年代から長く定期的に身に着けている。
その後はカミラ王妃やダイアナ元妃に貸し出された。やがて孫の世代に当たるキャサリン皇太子妃に手渡されるようになった。皇太子妃は、2017年の女王夫妻の結婚70周年記念式典、2021年フィリップ殿下の葬儀時など重要なイベントに選んだ。2022年女王の国葬時に思い出の品として首につけ、深い哀悼の意を表したのだった。
かなりの年月が経っているにもかかわらず、真珠は輝きを失わず、むしろさらに磨きがかかっているのが見て取れる。英王室のメンテナンスの腕は評価が高いが、それを証明しているかのようだ。ロイヤルレディー3代に亘って愛用される様子に、ものを大切にする気持ちが伝わる。日本とイギリスの関係を大切に思う象徴でもあるのだろう。