なぜ女王の傘は常にビニール傘だったのか

女王は小物にこだわりを持つ。まず傘だ。イギリスは日本と比べると季節に関係なく、よく雨が降る。女王のさす傘は、日本でもよく見かける透明なビニール製である。ただ縁取りの色は、身に着ける服とマッチさせている。黄色のコートドレスであれば、縁取りは黄色である。

傘はフルトンというイギリスブランドで、お母様も愛用されていた。しっかりしたつくりで、少々の風ではびくともしない。深いアーチ形が愛らしく、雨から肩まですっぽりと守ってくれる。透明なので、女王のお顔はよく見える。英国王室ご用達の逸品だ。

帽子についてもこだわりがある。着る服と同じ系統の色にしており、あまり高さがないのは、車の乗り降りの際にぶつからないようにするためだ。またたとえ風が強くても飛ばされないように、工夫がされている。女王の帽子が風で舞い上がった話は、確かに一度も聞いていない。

専属ドレッサーのアンジェラ・ケリーさんは衣服のデザインを決めるばかりでなく、帽子についても女王と詳細に話し合っている。

アクセサリーは外交相手へのリスペクトを示す

スカーフも女王には欠かせない。あごの下で結ぶのが女王スタイル。赤やオレンジの鮮やかな色を選ぶので、顔回りが一気に華やぐ。エルメスのスカーフが多く選ばれているようだが、エルメス社はパリの馬具工房から始まった。馬が大好きな女王は親しみを覚えるのだろうか。

またブローチも100点以上を所有する。いずれも記念日にプレゼントされたり、特別な機会にあつらえたりした貴重な品だ。

カナダを訪れた際には、カナダの国旗に描かれたメープルリーフをかたどったブローチをつけた。これは、プラチナにダイヤモンドがあしらわれていて、父がカナダ訪問前に妻にプレゼントしたもの。母から女王に受け継がれ、キャサリン妃がカナダに行く際にも貸し出された。アクセサリーは相手にリスペクトを示す重要なアイテムだ。