関心事になると途端におしゃべりになる

特性⑤専門的な話を一方的にしゃべり続ける

ふだんは他人とあまりコミュニケーションをとらないASDの人が、突然別人のようにべらべらしゃべり出すことがあり、周りの人が驚いたという話を耳にすることがあります。ASDの人の興味の対象は非常に狭いのですが、関心をもったことはとことん調べ、納得のいくまで研究して、誰よりも詳しくなります。こうした“専門分野”に話を振られると、突然スイッチが入ったように、もてる知識をすべてさらけ出そうとするのです。

傍からは、自分が博学であることをひけらかしているようにも見えるのですが、本人にそのつもりはまったくありません。自分が知っている情報をアウトプットしようという純粋な気持ちだけで話しているのであって、自慢ではないのです。

たとえば、先述のようにASDの人のなかには鉄道好きの人が少なくありませんが、鉄道の話題になると、その場にいる人が鉄道にまったく興味のない人であっても、お構いなしに自分の鉄道知識を披露し始めます。聞いている人たちが、ちょっと困った顔をしていても、表情から相手の気持ちを読み取ることができないので、迷惑がられていることに一向に気づきません。彼らは、“話すこと”をコミュニケーションの手段とは考えていません。

同じ趣味を持つ仲間の存在が大事

私も診察室でよく経験しますが、ASDの人と面談すると、会話が噛み合いません。私が尋ねた質問から微妙にズレた内容の話を一方的にしゃべり続けたりします。

しかし、他人と積極的に関わることが少ないASDの人に、「この話題については話したい」と思えるようなテーマがあるのは好ましいことだといえます。せっかく自分の好奇心を刺激する興味の対象が見つかったのですから、その趣味を大切にし、趣味に関わる時間を充実させることが望まれます。そして、自ら調べて身につけた膨大な知識を、披露し合える仲間がつくれるともっとよいでしょう。デイケアやショートケアに参加することで、同じ趣味をもつ仲間が見つかり、仲間と会話を弾ませる経験ができるとよいと思います。

ASDの人の場合、大学で留年してしまうこともめずらしくないのですが、そうしたときでも、サークル活動で「鉄道研究会」などに籍を置くことが、しばしば救いになります。そこでは、同じASDの仲間がいて意気投合できるうえ、大学生活で必須となる情報を入手することも可能になるからです。