内臓感覚はむしろ鈍感

このほか、声を掛ける際に、後ろからいきなり声を発したり、肩や腕などを軽く叩いて注意を引くような行動をとったりすることが、本人を極度に驚かせたり、痛みや不安を感じさせたりする可能性もあり、周囲の人が留意する必要があります。苦手な音などがないかどうか、確認しておくことが大切だといえるでしょう。

加藤進昌『ここは、日本でいちばん患者が訪れる 大人の発達障害診療科』(プレジデント社)

感覚過敏については、「幼い頃に、子どもを抱っこしようとすると嫌がって体を反り返らせるので困った」といった話を母親から聞くことがよくあります。しかし、子どものほうから抱きついてくるときは、そうした過敏さをまったく示さないそうです。ASDの感覚過敏の本態は、謎というほかありません。

一方、ASDの人は、内臓感覚はむしろ鈍感なことが多く、過敏とは逆の、鈍麻がみられる場合もあります。満腹がわからなくて際限なく食べ続け、倒れてしまった例や、腕にケガをして出血しているのに、痛みを感じないのか平気で過ごしてしまう例、高熱が出ていても、「だるい」とか「つらい」といった感覚がなく、普通に活動を続けてしまう例などがあります。感覚過敏と感覚鈍麻の両方が混在している人もいるのですから、まったくもって不思議です。

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