「怒れるフォロワー」が分断を助長する

仕掛人を支えるのは、怒れるフォロワーたちである。すでに、SNSでの憎悪の拡散に見るように、21世紀の主たる戦場は、見渡す限りの平原や砂漠、海原ではなくなっている。使用される武器も、銃やバズーカ砲、戦車、戦闘機ではない。

バーバラ・ウォルター著、井坂康志訳『アメリカは内戦に向かうのか』(東洋経済新報社)

あたかも『カラマーゾフの兄弟』の長男ミハイルが叫ぶように、「最大の戦場はどこか? それは人間の心なのだ!」。戦場は今やスマホの中にある。現在のようなネット社会では、人々の心内はサイバー空間上に可視化されている。つまり、内戦に見まがうべき状況は、ネット上ですでに発火し、類焼し、爆炎を上げているのだ。

もちろん、日本が突如として内戦になるかというと、それは杞憂きゆうと言わなければならないだろう。というか、そんなことは考えたくもないというのが本当のところだろう。それに幸運なことにアメリカとはだいぶ初期条件が異なっている。

だが、この30年ほど、冷戦とバブルの2つの「崩壊後」を顧みる時、その「考えたくもないこと」が優先的に生活圏に立ち現れてきた事実に思いを致さざるを得ない。ウォルターの『アメリカは内戦に向かうのか』は、日本のアクチュアルな状況に置き換えて読むとき、多くの教訓を与えてくれるだろう。

関連記事
なぜ28万人がガーシーに投票したのか…「暴露系YouTuber」があっという間に国会議員になれた本当の理由
幹部のツイッター削除、発言撤回の背景に何があったか…佐藤優が見た共産党内の"危機感と動揺"
自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション
「トランプの本性を隠すのに必死でした」安倍元首相が生前に語っていた"日米外交交渉の舞台裏"
だれが何をやっても日本円は紙くずになってしまう…日銀総裁が「東大の経済学者」となった本当の理由