フィルターはTikTokで大いに話題になっている。インサイダーは3月8日時点で、ボールド・グラマー単体で4億回近い再生回数を稼いでいると報じた。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は3月16日時点で、20歳ほどの若返り効果をかける「ティーンエイジ・ルック」フィルターとボールド・グラマーを合わせると、すでに2500万本以上のTikTok動画が投稿されていると報じている。

同紙の記者も、品質に驚いた。サラ・オブライエン記者は、調査のためボールド・グラマー・フィルターを試し、「とても驚きました」「(女優のキム・)カーダシアンとお近づきになれるんじゃないか、というくらいのルックスになりました」と語る。

心理学者は警告「モデルやセレブを見るのとは異なる」

一方、ユーザーへの精神的な影響が大きいため、禁止すべきだという議論が早くも巻き起こっている。オブライエン記者は、カナダのヨーク大学のジェニファー・ミルズ教授(心理学)に見解を聞き、次のように要約している。

「教授の話をまとめると、ボールド・グラマーは人々に、究極なほど(美化とは)正反対の効果をもたらすとのことです。フィルターを適用した自分の姿を見たあと、(本物の)自分を目にすると、前よりも気分が落ちこむのです。単にモデルやセレブを見たのとは違って、理想的な自分の姿と現実の自分とを比較することになるからです」

解除後に自分の本当の姿を目の当たりにし、戸惑うユーザーは多い。CNNが取り上げたTikTok動画のなかで、TikToker女性のジョアンナ・ケニーさんは、悲しげな表情でフィルターの使用感を語った。この動画では、モデルのようなくっきりとした目鼻立ちの女性が川辺に立ち、自分にカメラを向けている。自信あふれる表情だ。

ケニーさんは、美しく加工された自分に驚いたようだ。「こんなルックスと短時間でもどう向き合えばいいか、私の脳は追いついていないみたい」と語る。しかし次の瞬間、フィルターを解除すると、先ほどとはかなり印象が異なる、本来の容姿が画面に現れた。

「それで……これ……!?」とケニーさんは眉をしかめ、本来の自身の容貌への失望をあらわにしている。

「無加工の自分」に耐えられず、整形手術のきっかけになる

インサイダーは、「このフィルターは、極めて欺瞞ぎまん的な手段により、非現実的な美の価値観を広めるものであり、危険であるという意見も多く聞かれる」と報じている。

ニューヨークの臨床心理学者であるジェーシー・ロペス・ウィトマー氏はインサイダー誌の取材に対し、「ことによるとフィルターを重用する人々のなかには、フィルターを適用したルックスに魅入られ、実生活で再現しようとする人が出てくるかもしれない」との懸念を明らかにした。