TikTokやInstagramなどのソーシャルメディアの登場以前にも、個人が動画や写真に写ることはあった。だが、多くは日常や旅行先でのスナップ写真程度であり、個人や仲間と楽しむためのものだ。
そこへ訪れたソーシャルメディアの流行は、自分との向き合い方を一部でゆがめてしまった。不特定多数の面前で、自分自身をコンテンツとしてアピールしたい動機を生んだ。投稿者は必然的に再生数を追うようになり、商品としての「美しい自分」「完璧な自分」を追求し、つねにルックスに不満を抱える状況になってしまった。
ルッキズムを否定し、容姿ではなく内面で人を判断しようという社会的な潮流が生まれている。体型をからかう行為が非難の的となるなど、ずいぶんと意識は変化してきた。誰もがありのままの容姿に自身を持ち、内面や行動で評価される時代へと意識はシフトしている。
その一方で、時代の最先端を行くはずのTikTokなどソーシャルメディアが、この逆の潮流を生み出している倒錯した事態になっている。
若者たちの心を守る対策が必要だ
加工で自分を美しく見せようとする動きは、とどまるところを知らない。TikTokは2月下旬、エフェクト作成ツールの「Effect House」に向け、生成系AIの新たなツールをリリースした。ユーザーは誰でも自前のエフェクトを作成し、眉や笑顔をAIで調整するフィルターなどを生み出すことが可能になった。
拡充するAIツールを受け、ソーシャルメディアをきっかけに自分の容姿に不安を抱く流れは、今後ますます加速するおそれがありそうだ。若者たちの心を守る対策が早急に求められよう。