文豪をキャラクター化したアニメがきっかけに

ポップカルチャーの動向を報じる米ダートは、一連の太宰ブームが日本のアニメから始まったと指摘している。朝霧カフカ氏による漫画『文豪ストレイドッグス』を原作とする同名のアニメ作品が、ワーナー傘下の国際アニメチャンネル「カートゥーン ネットワーク」によって海外で放送され、英語圏で絶大な支持を得ている。

同作は、若き文豪たちが架空の能力でバトルアクションを繰り広げるという斬新なストーリーだ。日々自殺の試行にいそしみながらも裏社会の組織の幹部を務める太宰治をはじめ、『山月記』の中島敦や『怪人二十面相』の江戸川乱歩など、文豪たちが若きキャラクターとして画面を駆け回り、作風を踏まえた攻撃能力を披露する。

ダートは記事を通じ、太宰はアニメ版のキャラクターとしても、内面に影を抱える男として描かれていると紹介している。人間関係に悩む現代のアメリカの若者の心を掴んだのも偶然ではない、と記事は指摘する。

現代の若者に響いた古典文学

太宰治は昭和を代表する文豪のひとりであり、日本では教科書にも採用されている『走れメロス』などが有名だ。邪智暴虐の王に激怒したメロスが、友人の石工・セリヌンティウスとの約束を果たすため、日没の期限を目指して大地を駆ける。

38歳のときに玉川上水に入水してその生涯を閉じるまでに、太宰は300作近くを著した。著名な作品にはほかにも『人間失格』『斜陽』『女生徒』『津軽』などがあるが、なにぶん大正時代から昭和初期を生きた作家ということもあり、現代の日本で多くを読了したという人は少数派かもしれない。

その太宰作品が現代のアメリカで、少年少女たちの心を掴んでいるという。日本が定評を誇る漫画とアニメがきっかけとなり、現代の若者が強く共感する古典作品の再発見に至ったようだ。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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