花粉症薬で集中力の低下や眠気
ヒスタミンとは神経伝達物質で、花粉症の症状を起こす原因物質です。抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があり、いずれもヒスタミンの働きを抑え、主に鼻水やくしゃみの症状を軽減させます。症状を抑えるのはもちろん、毎年強い症状が出ている人は、症状が出始める前に使用すること(初期療法)で、症状を軽くし重症化を防ぐことができるといわれています。
抗ヒスタミン薬の代表的な副作用は、集中力の低下と眠気です。抗ヒスタミン薬の多くは、添付文書に、自動車の運転や集中力を要する作業に関する注意喚起文が記載されています。
• 眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させる
• 眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないように十分注意する
(鹿児島県医報 第56巻第2号(通巻660号)2017(平成29年))
第1世代抗ヒスタミン薬に含まれる成分として、特に注意が必要なのが「ジフェンヒドラミン塩酸塩」と「ペリアクチン」です。
ジフェンヒドラミン塩酸塩は、催眠鎮静薬にも含まれる成分で、眠気が強く現れます。また、ペリアクチンには、脳内をけいれんしやすい状態にする作用があります。特に子供は神経系が発達途中なので、脳のけいれんを起こしやすく、ペリアクチンはけいれんを誘発する危険性があると言われています。
脳の覚醒機能が弱まってしまう
抗ヒスタミン薬を服用すると、なぜ眠たくなるのでしょうか。
前述の通り、花粉症は体内に入った花粉に対する免疫反応です。一度抗体ができた体内に再び花粉が入ると、粘膜にある抗体と結合します。するとヒスタミンが分泌され、受容体とよばれるタンパク質と結合することでアレルギー反応を起こします。
抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンの代わりに受容体と結合することでアレルギー反応を抑えます。ヒスタミン受容体は脳にも存在しており、脳を異物から守ったり脳を覚醒させたりする役割を持っています。抗ヒスタミン薬が脳のヒスタミン受容体に結合すると、こうした機能が弱くなり、その結果興奮作用を抑制してしまい、集中力が低下したり、眠気を感じたりしやすくなるのです。これが、抗ヒスタミン薬が眠気を引き起こす原因です。ほかに、便秘や吐き気、口の渇きなどが起きることもあります。