脳梗塞を発症することも
海外の事例となりますが、くしゃみの直後に脳梗塞を発症したという、まれな症例も報告されています。61歳の男性は、くしゃみの直後にめまいと耳鳴りを訴え受診。左の難聴と右方向の眼振(眼球がけいれんしたように動く症状)が観察されたため、最初は「外リンパ瘻」(難聴・耳鳴り・めまいを症状とする内耳疾患)と診断されました。しかし複雑な混合症状が見られたため再検査を行ったところ、後部下小脳動脈の小脳梗塞がわかりました(※1)。
このように、くしゃみが原因で脳に何らかの障害が起き、一時的に意識力が低下することがあります。くしゃみで貧血のような症状が起きた経験のある方や、持病をお持ちの方は特に注意が必要です。
2人に1人が花粉症の可能性
ひんぱんなくしゃみを引き起こす疾患として代表的なのが花粉症です。冒頭で紹介した交通事故の中にも、花粉症によるくしゃみが事故の引き金になった可能性のあるケースがありました。
花粉症は、体内に入った花粉に対して人間の身体が起こす免疫反応です。つまり、体内に侵入した花粉を、体が異物と認識し、異物(抗原)に対する抗体が作られて、再度侵入した花粉を排除しようとする反応です。一般的に免疫反応は身体にとって良い反応ですが、免疫反応が過剰に起こって生活に支障が出ることがあるのです。このように身体にマイナスに働く免疫反応がアレルギーで、花粉に対するアレルギーは花粉症と呼ばれています。
2022年に行われた、47都道府県各100人、合計4700人を対象にした花粉症に関する調査では、「花粉症の症状がある」と回答した人が49.6%となり、約2人に1人が花粉症を罹患している可能性があることがわかりました(※2)。ほかにも、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査が約10年おきに3回実施されており、花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%で、各回の調査で約10ポイントずつ増加していることがわかります(※3)。
つらい花粉症の症状を抑えるために、花粉症薬の服用で対策している人も多いでしょう。しかし、花粉症薬は副作用が出ることもあるため、服用には注意が必要です。花粉症薬として代表的な「抗ヒスタミン薬」の効果や副作用についてご紹介します。
※1 関雅彦、水足邦雄、田所慎、塩谷彰浩「くしゃみを契機に発症した椎骨動脈解離による小脳梗塞」Equilibrium Research, Vol.79(1) 20-26, 2020
※2 予防医学のアンファー「47都道府県ニッポン健康大調査第9弾!日本の2人に1人は”花粉症”!? ドクターが教える簡単にできる『花粉症対策』とは? 花粉症罹患率No.1は群馬県、山梨県、静岡県!」2020年2月18日
※3 環境省「花粉症環境保健 マニュアル 2022」2022年3月改訂版