大学の中にはChatGPTの使用を禁止したところも

オタク六法』が出版されてから数カ月が経ちましたが、この間も生成系AIは日進月歩で発展を遂げ続けており、新しい話題が日々絶えません。『オタク六法』で解説した内容の時点から、日々状況はめまぐるしく変わっています。

最近では、OpenAIが昨年11月にリリースしたChatGPT(人工知能チャットボット)と、今年3月にリリースしたGPT-4(マルチモーダル大規模言語モデル)が特に世間の耳目を集めている印象です。

写真=iStock.com/Userba011d64_201
※写真はイメージです

GPT-4に司法試験を解かせたところ、人間の受験者と併せても上位10%に入るような成績を記録したとのことで、AIに人間の法律家が駆逐される未来が現実味を帯びてきました(この記事も私が書くよりもGPT-4に任せた方がよかったかもしれません)。

他方で、これらAIがレポートや課題に“悪用”されるといった懸念も生じており、既にChatGPTの利用を禁止している大学もあるようです。

AIが生成した小説・論文等のテキストも、AIが生成したイラストと同様に、第三者の著作権との関係が問題になり得ますが、イラストの場合と同様に考えることができます。生成されたテキストが第三者の著作権を侵害するものであるか(複製や翻案に当たるかどうか)は、その要件を満たすかを個別具体的に検討して判断することになります。

AIコスプレは本質的には「アイコラ」と同じ

ChatGPTの他にも、「AIコスプレイヤー」というものが一時期話題になりました。これは、画像生成AIに複数の学習済みモデルを組み合わせることによって、実際に撮影した写真かのような女性コスプレイヤーの画像を生成するというものです。AIで生成された画像特有の不自然さもしばしば見受けられますが、総じて生々しい臨場感のある画像が生成されており、その完成度の高さには思わず目を見張ります。

さて、AIコスプレイヤーのように人の実写画像をAIで生成する場合、イラストやテキストを生成する場合とは異なる法的問題が生じ得ます。

たとえば、特定の女性コスプレイヤーの写真を大量に学習させたうえで、AIにそのコスプレイヤーとそっくりな女性の性的画像を生成させた場合を考えてみましょう。

これは、アイドルなどの特定人の顔写真を性的画像と合成して(コラージュして)、実在しない合成写真を作成するいわゆる“アイコラ”を彷彿とさせますが、アイコラについては、裁判例上、名誉毀損きそんが成立するものと考えられています。

アイコラ画像を画像掲示板上に掲載して不特定多数の者に閲覧させた行為が名誉毀損罪(刑法230条)に当たるかが争われた事件があります(東京地判平成18年4月21日判例集未登載)。

●刑法 第230条(名誉毀損)
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。