安易に示談に応じてはいけない
松尾さんの裁判を紹介した記事の中でも、被害者側が示談に応じず、民事裁判をしたことによって、損保の提示額を大きく上回る判決を勝ち取った以下の例を紹介しました。
●0円→2億1900万円/被害者の100%過失を完全に逆転
●0円→5900万円/裁判所が事故後の自殺と事故の因果関係を認定
●1億2600万円→2億4300万円/裁判所が脳外傷被害者への常時介護と住宅改造費等を認定
●2200万円→1億400万円/「福祉費は賠償金の中に含めない」という判例を基に逆転
万一、交通事故に遭った際には、こうしたケースが頻発していることをしっかり認識し、安易に示談に応じないよう気をつけるべきです。
特に、重大事故になるほど払い渋りの金額も大きくなりますので、必ず交通事故に詳しい弁護士に相談し、過去の判例などを調べることをおすすめします。
「対人無制限」が誤解と苦しみを生んでいる
2023年2月21日、衆議院予算委員会第三分科会において、興味深い質疑が行われていました。緒方林太郎衆議院議員は、交通事故被害者の損害賠償が「男女格差」や「障害の有無」によって減額されている現状を挙げたうえで、以下の質問を行いました。
「損害保険における『無制限』という表現について、お伺いしたいと思います。自動車保険で補償が『無制限』と書いてあるケース、あれは、実際には有限責任であって、その有限責任の中でも相当因果関係の範囲での補償ということになるわけですね。『無制限』という言葉から受ける印象と、実際の実務の間にはかなりの乖離があります。消費者に誤認を与えているのではないかと思いますが、消費者庁、いかがですか」
名指しされた消費者庁の担当者は、「個別の事案に関するお答えは差し控え、一般論として……」と前置きしたうえで、こう答弁しました。
「事業者が自己の供給する商品、サービスの内容について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると誤認されるような表示を行う場合には、景品表示法上、問題となってまいります。また、注意書き、適用条件、例外などが小さく記載されていたとしても、表示全体から見て一般消費者が著しく優良であると認識するのであれば、景品表示法上、問題となることがあり得るところでございます。お尋ねの損害保険に関する表示につきましても、消費者庁といたしましては、景品表示法上、問題となる具体的事案に接した場合には、同法に基づいて厳正に対処してまいりたいと考えております」