──日本の選手はチーム内で、意見の食い違いが起こるのを避ける傾向が強いと思います。もし対立が起こった場合、どのように対処していますか。

幸いなことに、今の代表チームには健全な競争心があるだけで、チームワークを乱すような対立はありません。私が監督に就任して2年近くになりますが、同じ選手をずっと招集してきたわけではなく、たくさんの選手を入れ替えながらチームをつくってきたことが健全な競争心を醸成するうえで影響していると思います。先ほど選手を選ぶ際の4つの基準のお話をしましたが、それに加え、年齢に関係なく、向上心をもっている選手を評価しています。

──サッカーのオランダ代表は選手たちが互いに自己主張しながら、チームとしての合意形成を図るというやり方を採っているようです。日本の場合は対照的で、選手たちの自己主張は弱く、むしろ周囲を察し、チームのことを第一に考える傾向が強いと思います。オランダのように、あえて選手同士の主張のぶつかり合いをチーム編成に利用するやり方はどうでしょう。

サッカーだけでなく政治や宗教、そして企業でも同じだと思いますが、組織が一致団結するのは同じ方向を向いている場合です。個の対立を利用して団結を導くのではなく、私はみんなを同じ方向に向かせることでチームの団結を実現させたいと考えています。

イタリアでACミランを私が初めて率いたときのことです。当時チームは前年の順位が11位と、成績が低迷しており、みんなが同じ方向を向く状態ではありませんでした。自分が出場したいばかりにチームの和を乱す選手がいました。次の契約内容ばかりに興味をもつ選手もいました。でもシーズン終了まであと1カ月という時期になって、優勝の可能性が見えてきたのです。その途端、選手の意識が変わり、チーム全員が同じ方向を向くことができたのです。結果はみごと優勝でした。