他にもトラウマによって心身に様々な影響が出る

これまでご紹介したこと以外でも、トラウマの影響として様々な症状が起こります。

みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)

身体面では、睡眠障害、不定愁訴、頭痛、腰痛など身体の痛み、自己免疫疾患、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞や、がんのリスクの増加など。

精神面では、うつ状態、不安障害、感情調整の障害、強迫性障害、リストカットなどの自傷行為、希死念慮、パーソナリティ障害、摂食障害、双極性障害、解離性障害(重いケースの場合は解離性同一性障害)など。トラウマを想起するような状況を避ける「回避」もしばしば起こります。また、各種の依存症もトラウマの結果としてよく見られます。

重いケースではカウンセリングを続けることができずにドロップアウトしてしまうこともあります。

診断名は、症状をもとにいろいろな名前が付きますが、その奥にある要因がトラウマであることは珍しくありません。

トラウマの存在を前提とした診断とケアへ

医師の神田橋條治氏なども「出会いの当初はすべて受診者を「複雑なPTSD」だと想定」(原田誠一編『複雑性PTSDの臨床』金剛出版)とするなど、今後の臨床心理、精神医療は、まずはトラウマがある、という見立てからスタートすることが当たり前になるかもしれません。

写真=iStock.com/mapo
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そして、トラウマによるものでは? と見立てることで、正しい理解やよりよいケアにつながることが期待されます。実際に、医療・看護・福祉の世界では、患者の症状、行動の背後にあるトラウマを理解して対応する「トラウマインフォームドケア」が注目されています。

そうしたことから、従来のようにトラウマの症状を別々に捉えずに、スペクトラム(連続体)と捉えるべきだという提起もなされています。今後、「トラウマおよびストレス関連スペクトラム障害」というような概念に発展する可能性も十分に考えられます。

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