事務所も、テレビ・大手紙も取材を拒否
こうした心理を、性犯罪の被害者支援に携わる川本瑞紀弁護士はこう解説する。
「性被害に遭っても、なかなか認められないことも多い。それは自分を無条件に肯定してくれた人が、性行為だけが目的だと信じたら、自分が壊れてしまうから。だから認めたくないのだと考えられます」(同)
番組を作るうえで、ジャニーズ事務所の取材は当然だが欠かせない。BBCの取材班は事務所まで乗り込んだそうだが、取材はできなかったという。
メグミ・インマン氏がこう話す。
「日本のエンターテインメント界で、ここまで力を持つ会社が取材を受けないことにとても驚きました。少年の性被害という重大な問題について聞いているわけですから、説明する責任があるはずです」
それは日本の大手メディアも同じだった。
BBCは、公共・民間放送、新聞に取材をしたが、
「完全な無視か、丁寧な拒否でした。『ご関心をお寄せ頂き有難うございます。ただ私たちは関与したくはありません』というもの。取材に応じたのはゼロ」(アザー氏)
彼は守られるに値する人間だったのか
何十年も続いてきた、ジャニーズタレントたちへの性的虐待を、見て見ぬふりをしてきた日本のジャーナリズムの責任は重いはずだ。
外国のメディアがここまで掘り下げて取材し、ジャニーズ事務所の社長であった人間の責任を追及しているのに、事務所もメディアも、それには答えず逃げてしまった。
3月18日、19日には日本でもBBCワールドニュース枠で放映することが決まったという。
「日本では芸能人の話、単なるスキャンダルと受け止められてしまうかもしれません。でも、これは50年以上続いた少年に対する性虐待のシステムの事件です。スキャンダルではなく、事件なのです」(インマン氏)
この国で字幕付きで放送された後も、メディアが沈黙を守るとしたら。ジャニーズのアイドルたちの中から、自分も虐待を受けていたと告白する人間が誰も出てこないとすれば。
BBCのレポーターがいっているように「喜多川は死んでも守られている」ことになるのだろう。
ジャニー喜多川という人間は守られるに値する人間だったのか。改めてメディアが、日本人が問われることになるはずである。