性的虐待が認定された後も繰り返していた

審理では、ジャニー氏本人や記事で証言した少年2人も出廷している。一審は文春側が敗訴したが、東京高裁では、ジャニー氏が所属タレントにセクハラ行為をしているという記述を認め、ジャニー氏の性的虐待を認定して、名誉毀損には当たらないとしたのである。

ここで決め手になったのが、ジャニー氏が法廷で、「(法廷に出てきた)彼たちはうその証言をしたということを、僕は明確には言い難いです」と述べたことだった。

2004年に高裁判決が確定したが、それを大きく報じる日本のメディアはなかった。

『文春』が連載中も唯一、ニューヨーク・タイムズ(2000年1月30日付)が「陰りゆく、日本のスターメイカー」との見出しを付けて報じただけだった。

しかし、自分の性的虐待が裁判で認定された後も、ジャニー喜多川氏はまだ同じことを繰り返していたのである。

リュウ氏がBBCの中で告白しているのだ。彼は現在31歳で、16歳ごろの話だというから、2007年から08年ごろのことである。ジャニー喜多川氏からマッサージをしてあげるといわれた。だがジャニー氏の手は肩からどんどん下がっていった。しかしリュウ氏は断る勇気を持っていた。

するとジャニー氏は、「ごめんね」といって他の部屋に行ったという。

被害者が「大したことではなかった」と話す現実

日本の主要メディアが、ジャニー喜多川氏の性的虐待を報じていたら、彼が再び少年に手を出すことはなかったのではないか。

性的虐待問題を『文春』以外の他のメディアが真っ当に報じていれば、さらなる被害者を出さずに済んだはずである。

判決確定から19年たって、初めてテレビでジャニー氏の性的虐待を放映したのも、日本のメディアではなく、イギリスのメディアであった。

しかも、BBCが報道したことさえも、『文春』や『日刊ゲンダイ』、『フライデー』以外に報じる日本のメディアはほとんどなかったのである。

さらに不思議なことがあると、番組でレポートしたモビーン・アザー氏はいっている。

「最もショックを受けたのは、ジャニー氏の不適切な行為を経験した人たちが、『大したことではなかった』と言っていたことです。フランス語で『ブラゼー』と言いますが、『まぁまぁ、わかったよ。起こってしまったこと、そんなに悪いことじゃなかったよ』という態度です。これは自己防衛本能ではないかと思っています」(同)

担当記者も、

「性被害を打ち明けてくれた少年の中には、『ジャニーさんはすごく良い人だった』と言う方もいました。法廷で証言してくれた少年も、裁判官からジャニー氏に伝えたいことはと問われ、『ジャニーさん、長生きしてよ』と語ったそうです」(同)

遠ざかる橋の上に立つヒップスターの男
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