悪質ユーザーの「避難先」になっているのではないか
ここで注目すべきは、Twitterだ。検索サービスやYouTubeを提供するGoogleよりも相談件数が多い。
イーロン・マスク氏の買収後、大規模な人員削減をした結果、不具合が頻出。ロイターは、EUが米Twitterにコンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)を担当する人材を増やすよう求めたことを報じた。ヘイトやデマが増えたという調査結果も多く報告されている。
ヤフーなどが誹謗中傷対策を年々強化する裏で、悪質なユーザーが対策の行き届いていないTwitterへ流れている可能性が高いのだ。主要プラットフォームの足並みがそろっていない限り、「避難先」ができてしまう。
国境を超えた誹謗中傷対策が求められている
2022年4月、EUでは、違法コンテンツの排除などを義務付ける「デジタルサービス法案」が欧州議会で可決された。日本国内でも同年7月に侮辱罪が厳罰化されたほか、10月には匿名での誹謗中傷における情報開示手続きが簡易かつスピーディーになる改正プロバイダ責任制限法が施行された。このように、誹謗中傷は世界的に社会問題化しており、対策が進んでいる。
一方で、誹謗中傷対策は課題も山積している。そもそも正当な批判なのか、誹謗中傷なのかかという線引きは難しい。誹謗中傷をそのままにすれば問題だが、削除しすぎてしまうと表現の自由が侵されかねない。
国で基準を設けて削除することは、表現の自由を侵食する恐れにもつながるが、ご紹介したように企業によって対応はまちまちだ。
特に海外企業の場合は、日本の法律とは解釈が一致しないことも多い。たとえば米国には侮辱罪に相当するものがなく、過去には米Twitterが開示請求に応じないなどの問題も起きている。AIでの自動削除も、日本語にどの程度対応できているかは不透明なままだ。
インターネット時代、自国だけでの問題解決は難しい。国境を超えて、誹謗中傷問題の解決に取り組むべき時期にきていると言えるだろう。