「自衛隊を国民の安全のために活用する」と説明した志位氏
志位氏は、「過渡的な時期に、急迫不正の主権侵害、大規模災害など、必要にせまられた場合には、存在している自衛隊を国民の安全のために活用する」という第二十二回党大会決定(2000年11月)の決議を引用したあと、「Q&A」形式で次のように説明する。
Q「共産党は自衛隊を廃止するというけれども、もし日本が攻められたらどうするのか」
A「国民の多くが、そういう不安をもっている間は自衛隊をなくしません。万一、日本が攻められたら、自衛隊を含めて対応します」
Q「自衛隊を廃止した後で、日本が攻められたらどうするのか」
A「そういう不安があるうちは、国民多数が『自衛隊をなくそう』とはならないでしょう。ですから自衛隊は存在しており、自衛隊を含めて対応します」
(『新・綱領教室 下』)
志位氏のこの回答からも、社会主義・共産主義革命を成し得るのははるか彼方のことだから、その日が来るまで、自衛隊は永続するということになる。イエス・キリストが再臨(再び地上に現れる)まで教会が続くというキリスト教神学の発想に似ている。
「反戦・非戦」から「防衛戦争」を是認する党へ
これまで共産党は、憲法9条擁護を強調する「平和の党」の顔を強調していた。しかし、綱領上は以前から「国防の党」の顔も併せ持っていた。それが今回のウクライナ侵攻によって明確になった。共産党は「反戦・非戦」の党から「防衛戦争」を是認する党であることを強調するようになった。現時点において、安全保障政策をめぐっては、共産党が他党と変わらない「普通の党」になったことを意味する。
55年体制を経て、反戦、護憲、非武装を主張する絶対的平和主義の社会党の党勢がなくなり弱まってくると、共産党は社会党が持っていた護憲勢力を取り込もうと、例えば「九条の会」で主導権を握るなど、21世紀に入ってからは「護憲の党」としてあらゆる戦争に反対した。憲法9条は交戦権を認めていないのだから、素直に読めば、防衛戦争の可能性まで含めて制定時においては否定していた。
共産党の機会主義的な戦争観
社会党が「武力を用いての受動的抵抗権も認めない」という立場をとっていたのに対して、共産党は「中立自衛」で抵抗していく。共産党はそのほうが国民の支持を得られると思ったのだろう。絶対平和主義を唱える社会党が退潮するとともにその場所を占めることを共産党は考えた。すなわち、予見できる未来においては「憲法9条堅持」「反戦の党」「平和の党」を旗印に進もうとした。
そして今回、ウクライナ戦争勃発後の日本世論を考慮して、自衛隊活用論を強調するようになった。この党の戦争観が機会主義的であることの証左だ。