好きなことをやることこそが最高のストレスケア

好きなことをするという行為は、最高のストレスケアになります。僕の場合は漫画を描くという仕事が好きな行為でもありますから、仕事でストレスを感じることはあまりありません。とはいえ、それは自分自身でストレスと思っていないだけの話で、ストレスのない生活などというものはないわけです。

例えば、締め切りに間に合わせなければいけない仕事が目の前にあるとしましょう。多くの人は、もし間に合わなければ信頼を失いますから、頑張って締め切りまでにその仕事を終わらせますよね。この「頑張る」というところがポイントで、熱心な人ほど心や頭や体が疲労してもなんとか終わるまでは頑張ろうとします。心と頭と体は連動しているのですから切り離して考えることはできません。

ストレスの正体は人間の防衛本能らしく、長時間にわたって原稿を見ているだけでも疲労から自分を守ろうとストレスが生まれており、体のいろいろなところでホルモンが分泌されて変化が起こっているといいます。そうやってマイナスの刺激から自分を守ろうとするわけですね。

達成感を感じるために働きすぎるのは危険

好きなことをしているから自分にとってプラスだと思っていても、知らぬ間にストレスの影響が深くなっていて、ある日、ピンと張った糸が切れるように心が崩壊してしまう。そんな精神疾患が社会問題になり出したのは、「24時間戦えますか。」というコマーシャルが流行った1990年前後あたりだったと思います。

社会的な問題となった反動で、ストレスが辛くて悪いものという概念が広まってしまいました。しかし、ストレスの研究が進むと、人間が幸福な人生を送るためには、ストレスが必要なものでもあるということがわかってきたのです。

写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

24時間は極端な例で、徹夜を推奨するようなことでもありませんが、適度な緊張感やストレスを抱えながら、それを乗り越えて目標を達成することで人間は成長できるということなんですね。ストレスを乗り越えたところにある充実感や達成感が幸福感につながるからです。

ただし、この充実感や達成感が心地よいあまりに、ストレスをストレスと感じないようになって頑張りすぎてしまうことが危険なわけです。