定年後に充実した人生を送るにはどうすればいいのか。『島耕作』シリーズなどで知られる漫画家・弘兼憲史さんは「私と同じ年齢の島耕作は、75歳で相談役を退任しても隠居せず、社外取締役になった。働きながら適度なストレスを感じ、『たの苦しい』生き方を続けることが重要だろう」という――。(第1回)

※本稿は、弘兼憲史『弘兼流 好きなことだけやる人生。』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

階段をのぼる実業家。
写真=iStock.com/Chayantorn
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まだまだ現役の島耕作

先日、ある取材で、「島耕作は、なぜ隠居ではなく社外取締役になったのですか?」という質問を受けました。2019年から講談社の「週刊モーニング」に連載していた『相談役 島耕作』は、相談役を退任した島耕作がとうとう会社を去るという結末で、2022年2月をもって最終回を迎えました。

1カ月後には新連載を開始するということを誌上で告知していましたから、ありがたいことに、次の肩書はどうなるのかということがいろいろなメディアで取り上げられたのです。タレントの有吉弘行さんが『人間 島耕作』と予想されていたことを後から知り、『シルバー人材 島耕作』や『ボランティア 島耕作』、さらには『ユーチューバー 島耕作』から『終活 島耕作』なんていうものまであったようです。

なかには政治家に転身するのではないかと考えた読者もいたようですが、多くはビジネスから離れて日々の生活の中で、島耕作らしい生き方が描かれるのではないかという予想だったようです。

ところが、3月から始まった新連載は『社外取締役 島耕作』です。山田五郎さんがテレビの番組で、「相談役まで来たのだから、もう仕事はやめて、地域活動とかボランティアをやればいいのに、こういう人はいつまでも働いている。こんな人に社外から来られたらたまりませんよ。団塊世代のよくないところだ」というような猛批判をされたというニュースを見て笑いました。

漫画の中でも奥さんから「まだやるの?」と言われています。