「絶対的な親日派」だけ歓迎する日本の問題点

尹錫悦大統領の努力は、率直に評価すべきだ。私は、日本が親日的な韓国人に冷たいのはいかがかと思う。そもそも、戦後、日本は半島出身で日本人でありたいと希望した人、日本軍や公的機関で日本のために働いた人にすら国籍を与えなかった。また、いまもって、韓国で親日派の子孫として弾圧を受けている人にも無関心だ。

私がかつてENA(フランス国立行政学院)に留学して県庁で研修していたとき、監督教官の副知事は反独立派としてフランスの植民地行政に参加していたアルジェリア人だった。彼はアルジェリア独立後、フランス政府の高級官僚として職を得ていた。そういうのと大違いなのだ。

また、日本の保守派の人々が応援するのは、完全に日本の肩を持ってくれる韓国人だけだが、そんな親日派の人は韓国のなかで立場を保てない。そういう1人に、もう少し韓国内での理解も得られるようなやり方ができないのかと聞いたら、「そうすると、日本で講演料や原稿料を出してくれる人はいなくなる」と返された。

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安倍元首相の「外国首脳の心をつかむ方法」

しばしば、韓国の指導者は、政権の当初は日韓和解を掲げるが、末期になると反日になるという。たしかにそうなのだが、日本側にも責任があると思う。もちろん、彼らが安直な期待をするからでもあるのだが、難しいなら難しいで別のかたちで花を持たせるとかも必要だ。

たとえば、大阪生まれの李明博元大統領は、天皇訪韓を望むと公言していたが、それが無理と分かると慰安婦や竹島問題で敵対的になった。早くから難しさを正しく理解してもらい、それに代わるシンボリックな目標を一緒に考えたら良かったのにと思った。

かつて安倍元首相に外国首脳の心をつかむために何を心がけたか聞いたら、「相手が困っているときに相手が一番してほしいことをしてあげることだ」と話していた。

実際、安倍元首相の立ち回りは、ブリュッセル・サミットで新顔だったイタリアのレンツィ首相(当時)が手持ち無沙汰にしていたとき声をかけて出番をつくったり、イギリスのメイ首相(当時)がブレグジットの始末で袋小路にいたとき日本に招待して京都迎賓館で接待をしたりと、見事なものだった。