賃上げとともに就労支援の整備が不可欠だ

それを避けるために、政府はしっかりとしたセーフティーネットを設ける必要がある。セーフティーネットの代表的なものとして、失業給付や中小企業への補助金などがある。そうした取り組みは今後も必要だろう。

それに加え、わが国では、個々人が能動的に新しい知識や技術の習得に取り組む社会全体の制度も必要不可欠だ。実務に精通したプロを講師に招き、国際的にも遜色ないリカレント教育の場をより多く設ける。その上で、人材のマッチング向上を目指して職業紹介(就労支援)制度を強化する。

2000年代のドイツでは解雇規制の緩和に加え、職業訓練と就労支援を強化した。就労を拒む場合には失業給付を減額して人々に働こうとする意識を植えつけ、経済の再生を実現した。それは、企業、産業間での労働力の再配分を促し、企業の成長を支える。その上で企業が高い成長を実現できれば、より積極的に賃上げを行い、従業員の成果に報いようとする企業は増えるだろう。

足許、わが国で賃上げ機運が高まりつつあることは重要だ。政府がそれを支えるセーフティーネットを整備することは、中長期的な賃上げ機運を高める要素の一つになるだろう。

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