過度な早期教育は子供の“土台”を崩してしまう

【成田】語用論は「なぜ聞き手は、話し手の言葉の意味を理解できるのか」を研究する学問です。そこでは「言外の意味」が考察の対象になります。たとえば、「ラジオの音がうるさいなぁ」と言われたときに、ラジオのボリュームを下げたとします。このときにラジオのボリュームを下げた人は「うるさいから音量を下げて」という言外の意味を理解しています。

こうした言外の意味を理解させるには、日々の生活の中で言葉を通じたコミュニケーションが取れている必要があります。したがって、「こころの脳」に至るためには、「おりこうさんの脳」の段階で、子どもから言葉を引き出さなければいけないんです。

――「からだの脳」から順を追って、育てていくことが大切なんですね。

【成田】これまでご紹介してきた高学歴親は、過度な早期教育や習い事で「からだの脳」よりも先に「おりこうさんの脳」や「こころの脳」を育てようとしていました。

でも、1階が小さいのに2階にモノを詰め込みすぎると、家そのものが崩れてしまいます。2階にテレビやソファを欲しいと思うこと自体が間違いだとは思いませんが、まずは土台をつくることが大切なのです。

原始人から始めれば、子どもは自然と育っていく

――5歳以上の子はどうすればいいのでしょうか。

成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書)

【成田】成長してしまった子であっても「からだの脳」から育て直せば、大丈夫です。私たちは「からだの脳」を「原始人の脳」と呼ぶこともありますが、しっかりと睡眠をとらせて、段階を追って脳を育てていけば、子どもは自然と育っていきます。

――十分な睡眠をとらせるには、どこから手をつければいいのでしょうか。

【成田】親御さんも一緒に、朝早く起きることから始めていただきたいです。家族全員で朝早く起きることを習慣にできれば、夜は勝手に眠くなりますから。

原始的な土台をきちんとつくり直すことができれば、子育てはすごく楽しくなります。子育てに悩んだり、苦しんだりしている方も、それだけは信じて取り組んでいただきたいですね。

(構成=佐々木ののか)
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