6歳児なのに会社員より忙しいスケジュール

――そのお子さんの睡眠時間はどれぐらいだったのですか。

【成田】その子は保育園に朝7時から夜6時まで預けられていました。それから習い事に2つ行きますよね。それだけでも夜8時には寝かせられませんし、帰宅が夜10時くらいになることもあります。夜10時に寝て、起きるのが朝6時だとしても、8時間睡眠がギリギリということになります。

机の上にうつ伏せに横たわり、両親を励ます少年
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

――保育園が夜6時までで、それから習い事に行くとなると、会社員のダブルワークのようですね……。

【成田】そうなんです。会社員だってダブルワークをしたらつらいのに、そんな生活を6歳児がしているわけですよ。親御さんは「子どもが楽しんでいるから」と言うのですが、子どもだってほかの子たちと一緒にお遊戯したり、ご飯を食べたりする中で、対人ストレスがあるはずです。だから、おうちではのんびりさせてあげたほうがいいのです。

父親から「あんたはバカだ」と言われてきた子ども時代

――書籍では「私も親に信頼されない子どもだった」とご自身の幼少期の体験について触れられていました。「高学歴親」のケースでは、ご自身の体験と重なるところもあるのでしょうか。

【成田】そうですね。私自身も医師の父と、臨床心理士の母という高学歴親に育てられました。

幼稚園のときにバレエとピアノの習い事をさせられていましたし、100点を取ってもよく頑張ったねと褒められたことはありません。典型的な起立性調節障害の子どもだったのですが、それを理解されずにとにかく「勉強しろ、勉強しろ」と言われてきました。父親には「あんたはバカだなぁ」としか言われず、「私の人生ってうまくいっていないなあ、つらいなあ」と物心ついたときから思っていましたね。

――まさに『高学歴親という病』のようなご家庭だったんですね。

【成田】子どもたちの話を聞いていると、私が親元を離れるまで感じていた気持ちそのものだなと思いますね。

この環境から逃げたいけど、逃げられない。だから、進学の際は寮がある高校を迷わず選びました。子どもたちにも「私もあなたと同じことをしてたんだよ」といつも話しています。

――それはお子さんにとって心強いでしょうね。

【成田】私と上岡勇二という公認心理師の2人で向き合って、なつかなかった子供はまだいません。ただ、私は自分から子どもには近づきません。「わかるわぁ」とは言いませんし、共感しても「なるほどね、そういう感じね」という程度です。一定の距離を置くことが、子どもにとっては心地いいんじゃないかと思っています。