政府の地方創生策は、本当に効果的なのか

「できもしないことを、さもみんなががんばればできるかのように扇動する」

ほんの80年前の太平洋戦争中に、「欲しがりません、勝つまでは」などの標語とともに、わずかな食糧の配給に我慢をし、さらには「本土決戦」「1億玉砕」などと煽り、竹槍の練習などをさせていたことがこの国の歴史にはあります。

一歩引いて冷静に判断すれば、竹槍で機関銃に対抗できるはずもなく、食べる物もなく飢えてしまえば、戦うどころの話ではない、とバカげた話だと思えますが、その当時、内心は多くがそう思っていたとしても、口に出せる空気ではありませんでした。

しかし、どうでしょう。

令和の現代においても、「できもしないことをさもできるかのように言い続ける」界隈というのが存在します。少子化対策や地方創生などがそれに当たります。少子化対策が的外れであることは、〈政府の対策は「ひとりで5人産め」というようなもの…人口減少の本質は少子化ではなく「少母化」である〉に書いたので、再度ご覧いただくとして、今回は「若者が地方からいなくなる問題」についてお話ししましょう。

写真=iStock.com/Naoyuki Yamamoto
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一時、「東京の人口流出」が騒がれたが…

コロナ禍において、一時期、しつこいくらいに「東京からの人口流出」報道がされていました。特に、各地方紙が元ネタとして使う共同通信の記事が多い。2021年7月から2022年2月にかけて、毎月統計が出るたびに「東京○カ月連続で流出」というタイトルで記事化していたものです。

が、これもそもそも論をいえば、東京からの人口流出などありませんでした。確かに7月から2月までは流出していたのでしょう。しかし、日本で人々が移動するのは3月と相場が決まっています。もっとも移動する3月以外の月だけ取り出して、鬼の首を獲ったように大騒ぎされても苦笑しかありません。事実、2022年3月以降、この「東京からの人口流出」記事はほぼ消滅しました。

すでに発表されている最新の2022年の人口移動報告年報にある通り、東京圏一極集中は変わっていません。それどころか、長い歴史でみても、東京圏から人口が流出した時期はオイルショック期とバブル崩壊期の2回のみで、それ以外はすべて東京圏流入の一極集中です。政府が地方創生担当大臣を設立したのは2015年ですが、もちろん、それ以降もまったく地方は創生されていません。