全国36道県が若者に見放されている

人口の転入超過はほぼ20代によって作られています。県をまたいで大きな移動をするのは、就職によって移動する20代の若者によってほぼ占められます。18歳での大学進学もありますが、圧倒的に20代の移動が多い。

各年の人口移動という観点だけではなく、出生地と25歳時点で住んでいる場所の違いという観点で統計を見てみましょう。国勢調査の2020年時点における25歳年齢の若者の居住地と、彼らが生まれた年の1995年の都道府県出生数とを比較することでわかります。各地元での出生数に対して、どれだけ人口の増減があったかをグラフ化したのが図表2です。

【図表2】生まれ故郷の出生数と25歳時点居住地増減率

一目瞭然ですが、東京だけがダントツで110%。つまり、東京で生まれた子の2倍以上が25歳時点で東京に集中していることを意味します。それだけではなく、出生人口より増えているのは、東京圏の埼玉、千葉、神奈川と近畿圏の京都、大阪、滋賀、さらに愛知、宮城、福岡、岡山の11都府県のみで、その他はすべてマイナスです。しかも、そのマイナス幅も、東北や中国四国、九州などでは30%以上の減少をしているところも目立ちます。要するに、これは、多くの生まれ故郷が若者に見放されているわけです。

仕事がなければ、結婚することもできない

なぜ、これだけ多くの若者が東京圏などの都会に出て行ってしまうのか。決して親とうまくいっていないとか、田舎が嫌いだというものばかりではありません。

若者が都会へ流出するのはほぼ「仕事のある所へ移動する」からです。これは古今東西を問わず一緒です。逆にいえば、若者が出て行ってしまう地方というのは「仕事がない、稼げない所」ということになります。

そして、同時に「稼げない」ということは婚姻減にも少なからず影響を与えます。前掲した25歳時点での出生地からの人口移動率と2017年時点での就業構造基本調査から、25~34歳のいわゆるアラサー未婚男性の都道府県別年収中央値を計算し、それを相関図にプロットしてみたのが図表3です。バブルの大きさは2020年の都道府県別人口千対婚姻率の全国平均比で、白バブルは全国平均より婚姻率がマイナスであることを意味します。

【図表3】若者の人口移動と未婚男性年収中央値

こちらでわかる通り、人口の流入と年収とは密接に関係します。相関係数0.8021ですから、強い正の相関があります。つまり、若者たちは稼げる仕事を求めて、地方を飛び出していくのです。