韓国は国を挙げてロケ誘致を支援
一方、韓国ではロケ誘致は国を挙げて支援している。アメリカのマーベル作品をはじめとして結果も伴っており、2018年のマーベル映画『ブラックパンサー』は釜山でカーチェイスシーンを撮影している。製作スタッフは2週間、釜山でロケを敢行し、監督もロケ地としての釜山を絶賛している。
韓国には「韓国映画振興委員会」と呼ばれる特殊法人がある。行政機関による映画振興を目的としたもので、1973年に設置された。設置当時は映画振興公社と呼んでいたが、1984年に韓国映画アカデミーになり、1997年に南揚州総合撮影所の設置などを経て、1999年に現在の呼称に変わった。2006年の「映画およびビデオ物の振興に関する法律」の改正に伴い、映画発展基金を管理運営することとなった。
海外でよく見られるインセンティブ的な補助金を提供する機能も持っている。コンテンツ振興院同様、この機関も韓国政府の文化体育観光部の傘下にあり、2013年には公共機関の革新都市移転計画により、ソウルから釜山に移転している。
1970年代末まで韓国は軍事政権下にあり、国外の文化の輸入にも大きな制限がかかっていたが、韓国映画振興委員会のこれまでの一連の流れは、韓国の文化開放の道筋に沿った展開になっているといえるだろう。
スクランブル交差点を栃木県で撮影する日本
このような背景から、実写作品において、韓国と日本には大きな差が生まれている。端的にそれを示す例を挙げれば、日本では渋谷のスクランブル交差点の撮影許可を取るのが難しいために、栃木県足利市にリアルサイズでのロケセット「足利スクランブルシティスタジオ」が作られている。このことからわかるように、やはり東京のまちなかでのロケは難しいのだ。
しかし、アニメの中では克明に東京のまちが描かれている。海外では東京はアニメの中のまちのイメージになっているのかもしれない。半面、ソウルはドラマや映画の中に現実の姿で頻繁に登場する。
都市イメージの形成においては、やはり実写作品の中に登場してこそ、リアリティを喚起できる。そういう面で捉えると、すでに韓流ドラマが世界を席巻する現在、東京よりソウルにアドバンテージがあると見ていいのかもしれない。K-POPをはじめとしたほかのコンテンツの情報発信もそれを補完している。