日本が舞台の映画作品で、撮影場所が日本以外の場所となるケースが相次いでいる。法政大学大学院の増淵敏之教授は「日本はロケの制限が多く、ハリウッド映画などは韓国や台湾に流れてしまっている。日本はせっかくのチャンスを逃している」という――。

※本稿は、増淵敏之『韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

映画セットを組みニューヨーク州チェルシーの路上で撮影するクルー
写真=iStock.com/LeoPatrizi
※写真はイメージです

都市のイメージはメディアによって創られる

都市イメージの形成と伝播には、メディアの力が大きい。実際にイメージ先行型の都市もある。そのような都市は、住んでみたら話はまた別なのだが、メディアによって創られたイメージがわかりやすいことが特徴である。観光都市としての魅力にも溢れていることが多い。

都市名を聞いて、シンプルにイメージが思い浮かぶ都市といえばいいだろうか。札幌でいえばテレビ塔、大通り公園、時計台、京都でいえば清水寺、金閣寺などの神社仏閣、神戸でいえば港湾風景、北野異人館などが浮かぶ。パリのエッフェル塔、ニューヨークの摩天楼、ロンドンのロンドンブリッジ、東京の東京タワー、東京スカイツリーなども同様だ。

都市のイメージを構築する5つの要素

都市のイメージに関しては古典的な研究になるが、ケヴィン・リンチの研究が原点的な位置付けになるだろう。彼は都市の環境イメージを「アイデンティティ(identity):そのものであること」「ストラクチャー(structure):構造」「ミーニング(meaning):意味」の3つの成分に分析した(『都市のイメージ(新装版)』丹下健三/富田玲子訳、岩波書店、2007年)。とくに『都市のイメージ』では、アイデンティティとストラクチャーのふたつに絞り込んだ。そして5つのエレメントに注目する。

5つのエレメントとは、以下のように説明される。

①パス(path)は道路、人が通る道筋を指し、具体的には街路、散歩道、運送路、運河、鉄道などを示す。
②エッジ(edge)は縁、つまり連続状態を中断するもの。地域の境界を指し、具体的にはパスにならない鉄道路線、海岸、崖などである。
③ディストリクト(district)は地域、比較的大きな都市地域(部分)を指し、その内部の各所に同質の特徴がある地域を示す。
④ノード(node)は接合点、集中点のことで、重要な焦点、つまり交差点、広場、ロータリー、駅などのことである。
⑤ランドマーク(landmark)は目印であり、外部から見る道標。比較的離れて存在する目印のことで、建物、看板、モニュメント、山などを示す。

前述の例は、⑤のランドマークに当てはまるのだろう。