完全自動運転を見据えたデザイン設計
このように現在、世界中で次々と記録的な販売台数を打ち立てているテスラですが、ではテスラのEVにはどのような魅力があるのでしょうか。
最も象徴的なのは、車内のダッシュボード中央にぽつんと配置された15インチのタッチパネルです。モデル3やモデルYのダッシュボードには、普通の車のダッシュボードにずらりと並んでいるメーター類やスイッチ類がほとんどありません。車内の物理的なスイッチやメーターをほぼ撤廃し、このタッチパネルに操作や調整機能の全てを集約しているのです。ライトやミラー調整、エアコンの温度調整をはじめとするありとあらゆる操作は、この1枚のタッチパネルで行います。ミニマリスティックの極みのような先進的なデザインです。
テスラは視覚的なインパクトだけをねらってこのようなデザインを採用しているわけではありません。テスラが見据えているのは近い将来にやってくる完全自動運転時代です。
80万円のオプションでロボットタクシーにアップデート
完全自動運転になれば乗客は車の運転に一切関知することなく、ただ単に車に乗るだけになるため、運転操作に関するスイッチ類を今からなるべく撤廃しておく必要があると考えているからなのです。
テスラは、2017年から発売されたモデル3以降の全ての車両が完全自動運転に対応して自律走行が可能であり、いわゆるロボタクシーにアップデートすることができると主張しています。
自動運転と聞くと、自動運転専用の車両として特別なカメラやセンサー類を大量に取り付けていなければならないとイメージしてしまうのですが、テスラは、完全自動運転に必要なハードウェアはすでに搭載されていると主張しています。
約80万円の有料オプションの完全自動運転機能を購入していれば、Over The Air(OTA)と呼ばれる継続的なソフトウェアのリモートアップデートを行い、仮に自動運転用の演算チップなどハード面の交換が必要となっても無償で交換することで、今は手動で走行しているテスラ車が、ある日を境にロボタクシーとして自律走行を行うようになっている。このような未来まで見据えて車内にロボタクシー前提のデザイン設計を採用しているということなのです。