女性がクルマに求める2つの要素

さらに詳しく見ていくと、彼女たちが求める2つの要素が浮かんだ。

それが、機能性と個性的なデザインです。機能性の象徴が、クラス初の両側スライドドアと、必要に応じて組み立てられる「置きラクボックス」の採用。スマートな動線で後席にサッと荷物を置ける仕組みで、活動的な女性の使い勝手をイメージしたものでした。

一方、デザインのキーワードとして見えてきたのが、「愛着のわく、かわいらしさ」です。

フルモデルチェンジ後にも採用された、置きラクボックス(写真提供=ダイハツ)

初代で「かわいらしい」を具現化したのが、スマイルフェイス、おおらかでシンプルな丸みあるシルエットと、2色を配したツートーンカラーのデザイン。累計販売台数38万台を超える大ヒットを記録したのは、ひとえに個性的な「かわいらしい」のおかげでしょう。

「このクルマが街中を走るのを見て、『なにあれ?』『かわいい』と興味を持ち、実際に購入してくださる女性も数多くいらっしゃった。フルモデルチェンジを行うにあたり、まず考えたことは、『彼女たちに、これからもムーヴキャンバスのファンでいてほしい』ということです」と、同国内商品企画部の松田梨江さん。

写真提供=ダイハツ
ダイハツ国内商品企画部の松田梨江さん

ムーヴ キャンバスへの愛着は、SNSからも垣間見えます。インスタグラム上にも、「#ムーヴキャンバスがある暮らし」とハッシュタグ付きで愛車を呟く投稿が、5000件以上(23年1月末現在)。これは当初、ダイハツが仕掛けたものではなく、ファンによる自然発生だったそうです。

ユーザー家族からの「かわいらしすぎる」の声

また、改良点を探るうえでは、既存ユーザーを守ることに加えて、将来の顧客、すなわち「こうなら買うのに」という潜在顧客の声に応えることにも目を向けた。

ムーヴ キャンバスを家族と共有する大人世代から多く挙がったのは、「デザインがかわいらしすぎる」との声。また山間部に住む人たちを中心に、「軽(自動車)にはターボがないと、馬力の面から買いづらい」との悩みも聞かれました。