さらに、バラエティ番組も男性アナにとっては“逆風”です。番組制作費が減っていますから、女子アナを「お金がかからないサブスクタレント」のように考えて、アイドルなどの代わりに出演させて予算を節約するのが、いまや制作サイドの常識です。

それに、日本のバラエティ番組のメインMCのほとんどはまだまだ男性タレントですから、その「サブ」をやらせるには、女子アナのほうがバランスがいいということで、男性アナはあまり「お呼びでない」んですよね。

「男性アナはバラエティに起用されないから有名になれない。有名じゃないからいっそうバラエティに起用されない」という「バラエティ・デフレスパイラル」みたいな状況になっています。

このように、テレビ番組の三大ジャンルである「スポーツ、ニュース、バラエティ」のどれでも、男性アナウンサーたちは厳しい状況に追い込まれています。「なんであの人は辞めてしまったんだろう?」と思われるような退職者が増えているのは、こうした「男性アナ氷河期」が背景にあるからなのです。

極端な若手重視で局に長くいる理由がなくなった女性アナウンサー

さて、なぜ男性アナウンサーが辞めてしまうのか、おわかりいただけたと思いますが、じつは辞めるのは男性ばかりではありません。女性アナウンサーも「すぐに辞めたくなってしまう」現実があります。

その理由は? 簡単に言うと「極端な若手重視」で、局に長くいても報われないからです。

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かつては新人アナウンサーたちは、すぐにテレビに出ることはできませんでした。「アナウンス部」と言えばテレビ局内では体育会系の代表格で、入社するとすぐに『巨人の星』のような“地獄のスパルタ訓練”が待っていました。

アナウンスの基礎からの徹底的な教育はもちろん、礼儀作法もみっちり教え込まれますし、合宿でランニングさせられるようなノリの、「甘えた性根を叩き直す」と言わんばかりの“新兵訓練”が行われているのを横目に見ながら、我々総合職の局員は「アナウンス部コエえなあ……」とビビっていたのです。

「毎日アナウンス部で先輩たちの机を磨き、かかってきた電話は誰よりも早く取って完璧な日本語で対応しなければならない」というのが新人アナに課せられたいちばんのタスクでした。

そんな訓練期間を経て半年くらいで、ようやく「初鳴き」と呼ばれるテレビ番組への初出演が許されます。そしてそこから、提供読みとか5分程度の短い定時ニュース、さらには番組のコーナー出演などを経験して、何年も経ってようやく大きな番組へのメイン格での出演が許される! というのがアナウンサーのたどる道だったのです。

一歩一歩階段を上るようにして、次第に「一人前」として認められるのです。