公共インフラの新設には、許認可の取得や環境アセスの実施など、クリアすべきハードルが多い。これらにくじけ、同社は計画への提案書を送る前に姿をくらましたという。

プロジェクトは公式サイトから次々削除された

シカゴ・オヘア空港へ開通するはずだった高速輸送トンネルも、メリーランド州当局が条件付きで一部区間にゴーサインを出していた首都ワシントンD.C.とを結ぶトンネルも、すでにボーリング社のサイトのプロジェクト一覧から削除されている。

ワシントン・ポスト紙は2021年4月の記事にて、メリーランドの計画では6つの政府機関から承認を得る必要があり、プロジェクトの複雑さが浮き彫りになっていたと指摘している。

技術的課題も影響したようだ。複数の計画でボーリング社は、初期段階では自動走行車による輸送システムを提案している。その後、技術的な課題が判明した段階で有人運転のEV案に切り替え、その後入札せずに関係を絶つという流れを繰り返している。

現在ではあまりにも多くの計画が実質的に頓挫しており、トンネル構想自体がテスラのEVを売り込むための壮大なおとりだったと揶揄やゆする声さえある。

すなわち、本来LRTで結ぶ予定だった区間に介入し、実現不可能なほど安い工賃を提示して地下トンネル案を売り込む。そしてトンネル内では排気の問題からEVに分があるとし、テスラ車の採用をプッシュしているのではないかという観測だ。

しかし、数十年を要するインフラ開発を甘く見た結果、多くの計画が日の目を見ることなく立ち消えとなっている。テスラ車の採用どころか、ドタキャンを繰り返すばかりでトンネルの掘削契約にも至っていない。

「輸送力は地下鉄以下」と酷評されるベガス・ループ

現時点で実現性が比較的高い計画があるとするなら、それはラスベガスの主要施設を結ぶ都市内地下網「ベガス・ループ」だろう。だが、将来ベガス・ループに接続するとみられる「LVCCループ」を利用した人々から聞かれるのは、必ずしも賛辞ばかりではない。

LVCCループは、ラスベガス・コンベンションセンターの複数の展示棟を結ぶ移動手段として提供されている。利用者は地上あるいは地下に設けられた3つのステーションから、無料タクシーの要領でテスラ車に乗り込み、別のステーションで降車する。

ところが、渋滞知らずが売りのループのはずが、そうでもないようだ。テキサス州のラジオ局「テキサス・スタンダード」によると、ステーション付近で車両が混雑し、速度が著しく低下することがあるという。