アスファルトで舗装されたトンネル内の路面もかなり波打っており、現在の運行速度である時速約50キロを超えた高速移動には向かないとの指摘もある。1台あたりの乗車人数にも限界があることから、輸送力では既存の地下鉄に及ばないとの厳しい見方も出ている。
なにより、人々は気づいてしまった。真空カプセルで耳目を集めたハイパーループ構想と比べれば、単にトンネルを走るテスラでしかない。そこには何の新規性もないのだ。
残されたのは出口の見えないトンネルだけ…
もっともマスク氏の胸中には、いまだ真空方式への野心が息づいている。氏は昨年4月のツイートで、「ボーリング社は今後数年をかけ、実際に使用できるハイパーループの建設を試みてゆく」と力強く宣言した。
実現性は定かでない。以前の公約では、2020年までに長さ10キロのテスト用真空チューブを完成させるとしていたが、その後音沙汰なしだ。
SpaceXで宇宙空間の掌握をねらうマスク氏は勢いに乗り、一時は地下の世界さえ手中に収めるかに思われた。だが、即決即断を是とするマスク氏にとって、年単位で時間を要する関係各所との折衝は想定外だったようだ。
ラスベガスの計画はさておき、その他の都市への展開は頓挫したともみえる。EV方式にダウングレードしたトンネルさえほぼ実現せず、いまでは計画をかき乱された元候補地の自治体が、出口の見えないトンネルに取り残されている。
移動の概念を書き換えると期待されたハイパーループだが、実現は相当な未来の話となるのかもしれない。