自分で考えて動ける若手ほど辞めていく

若手育成と仕事の負荷についてはこんな悩みを抱える人が多いのではないだろうか。

「ストレッチな経験をさせてやろうと、これまで振ったことがない仕事を与えたところ、相談にも来ず立ち往生。最終的に自分で巻き取ることになった」
「教育とパワハラの差が正直に言ってグレー。教育と思ってやっても、声を録音する若手もいると聞くので、指導は必要最低限にしている」

もちろんこういった状況が長く続けば、組織や職場のパフォーマンスや社員の生産性の上昇スピードは鈍る一方であることは自明だが、上司や先輩層を責めても仕方がない。こうした上司や先輩の行動姿勢も現代の職場環境に適応しただけであり、環境が変わってしまった以上、システム全体を検討し直さなくてはならないのだ。

また、できる社員や成長した社員ほど辞める、という実感を語る人も多い。

「自分で考えて動ける若手ほど、次の異動先や出向先などを自ら提案してくる。なるべく希望に沿った配属をするが、一定数はこちらの示す案に飽き足らないのかやはり自ら転職先を探して辞めてしまう」
「目をかけていた若手が続けて辞めた。ここ最近続いたので、若手からあらたまった連絡があるとドキっとしてしまう」

社内のキャリアパスでは解消できない

また、この点については若手側から次のような意見を聞いたこともある。

「会社が打診してくれた配属先は希望に沿って魅力的でしたが、社内外の友人から転職した話を聞くと、『あの子もキャリアチェンジして自分がやりたいことに自分の力で近づくんだな』と思い次は自分の番かなと。上司を振り回してしまっていますが、いまも絶賛、悩んでいます」

若手が自律的であればあるほど、当然ながら職業生活・キャリアに関する情報を獲得できる範囲は広まり、現実的に若手が採れる選択肢の範囲も広まり、また揺れ動く悩みの幅も広がる。

こうしたなかで、社内で示すことができるキャリアパス提案の範疇はんちゅうでその悩みが解消できるとは限らない。外にさらに魅力的な選択肢があるとわかれば、その選択を押しとどめることは現実的に可能だろうか。他方で、「自律的でない若手になってほしい」という組織などないだろう。ここに解決しがたい矛盾が存在している。

以上の2つの解決困難な問題だが、ゆるい職場時代だからこそ可能な解決策があると考える。これを提示していこう。