若者は仕事に何を求めているのか。リクルートワークス研究所の古屋星斗さんは「若者が多様化していて、平均像を語るのは難しい。共通する傾向があるとすれば、プライベート志向とコストパフォーマンス志向だ」という――。
※本稿は、古屋星斗『ゆるい職場―若者の不安の知られざる理由』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
「若者」たちは少なくとも2層に分かれている
世間では、「Z世代は○○だ」「最近の若者は○○だ」という言説にあふれている。こうした意見を言いたくなる気持ちもわかるが、しかしこういった平均像で現代の若者を語る言説は(少なくとも就労やキャリアに関しては)、ほとんどが物事を過剰に簡略化しているか、そうでなければ現実が理解できていない誤解であると考える。理由はシンプルで、若者が多様化しているために「若者=○○」という一律の言い切りが成立しなくなっているためである。
少なくとも二層化していることをデータで示そう(図表1)。例えば、「現在の会社で長く勤めたい」か「魅力的な会社があれば転職したい」かと聞くと、52:48と概ね半分ずつの回答となっている。また、「会社でいろいろな仕事をしたい」か「会社で専門分野をつくりたい」かと聞くと、56:44とこちらも概ね半分ずつの回答となる。
「家族・配偶者としっかり相談してキャリアを決めている」かどうか、「忙しくても給料が良い仕事がしたい」か「給料は低くとも落ち着いて働きたい」か。こういった項目でもほぼ半分ずつの回答となっていることがわかるだろう。
そもそも“主流派”が存在しない
平均値である程度の傾向が見られるのは「仕事をメインに生活したい」か「プライベートを大事に生活したい」かについての質問に、「プライベートを大事に」派が多数を占めていることくらいとなっている。
このように、二項対立するような労働・仕事に関する考え方について半分・半分に存在している状況があるのだ。この半々の回答がさらに相互に掛け合わさって、主流派なき多様化が進んでいるのが、現在の若者について明らかになっていることである。
こうした状況があるとして、「最近の若者は……」という言葉で平均を語っているとすれば、フタコブラクダになっている実情に対して、コブの谷間の部分を平均値として指し示すことになり、誰のことも語ることができていないこととなる。もしくは、どちらかのことだけを「最近の若者は……」と語っているとすれば、もう半分の話は一切できていないのだ。