自分で武器を見つけて叫んでよ
――ソロデビューしようと考えたのは、なぜですか。 THE NEWS に入っていたし、人のバンドのサポートにも入っていた。バンドでメジャーデビューという考えはなかったんですか?
シシド いちばん最初はバンドでやろうと思って、バンドの名前も決めていたんですけれど、バンドサウンドだと振り幅が限られてしまうのがもったいないなということで1人になりました。ドラムもドラムで限られたことはあると思うんですけれど、バンドではなくソロにしたことは、振り幅を大きくしよう、ということが理由ですね。
――メジャーデビューすることで、いろんな人の目に、耳に届く。届くと何かを伝えられるチャンスが増える。それが良いこと、と考えてのメジャーデビュー?
シシド 伝える……という、何か明確なメッセージを持っているということは、わたしとしてはあまりなくて、わたしのパフォーマンスは、「わたしは、わたしで、ここにいますよ」っていう提示だと思っているんです。ライヴに足を運んでもらって、「わたし、ここで、こんな武器使って叫んでいます」って提示して、「思い思い自分で武器を見つけて叫んでよ」って言いたいです。ライヴを多くの人に見てもらえるように、そのきっかけをメジャーデビューというかたちで整えて戴いたということは、すごく大きいことです。
――今の音楽ビジネスを見ると、CDセールスや配信数だけが評価軸ではなくなっている。「いかにライヴをお客さんに見てもらうか、配信はそのための販促ツール」ぐらいに思って活動していらっしゃるミュージシャンの方もいる。シシドさんからすると、ライヴを見てもらいたいという欲望が、いちばん強いのですか?
シシド そうですね。やっぱり生で見てもらって、肌で感じてもらってわかるものだと思っているので。やっぱり、ライヴですね。
――6月9日のeggman(注・渋谷のライヴハウス)でのライヴを拝見しました。ステージが始まる前に、スタッフが、下に敷いた絨毯ごとドラムセットをずりずりとステージの前のほうへ運んでくる。まだ前に来る、もっと前に来る。こんなに前にドラムが出て来るというセッティングは初めて見ました。
シシド そうですよね、前に出ます(笑)。
――今日は新しいものを見るのだと楽しくなりました。ドラムセットがシンプルなのにも驚きました。今日、撮影に使っているものと同じ構成ですね。以前からこういうセットだったんですか。
シシド いいえ、ドラムだけをやっていたころは、目の前にタム(注・右手側にセットされているドラム。複数置くことで音の高低差を演出できる)を2つ置いていたんですけれど、まあ単純な話、見えやすくするようにどかしてしまって。あと今は手数ではなくビートで聴かせたいという自分の中の目標があるので、それに向かうために。やりたいと思っていたことに踏み込めるタイミングだったのかな、と。
――今の時点でのシシド・カフカの武器は何ですか。
シシド ドラムヴォーカル。
――その希少性?
シシド そんなに希少的とはあまり思っていないんです。セールスポイントは、ドラムヴォーカルをしているときのわたし。パフォーマンス、ですかね。
――ドラムの技術のセールスポイントは?
シシド 技術だけいうと、まだまだだと思っているんですけれど、パフォーマンスを含めたら、ちょっと、自信、あります(笑)。